不登校のお子さんが勉強をしない…。
本記事では、そんな悩みを持つ保護者の方々の
「不登校の子どもが勉強しないと、将来どのような問題が発生するのか知りたい」
「勉強しない不登校の子どもに対して、親としてどのようなアプローチを取るべきかを学びたい」
「不登校の子どもに勉強させるための、良い方法を知りたい」
といった将来への影響や対処法に関する疑問にお答えしていきます。
不登校のお子さんが勉強しないと将来どうなる?
結論として、3年程度の不登校であれば、その間に勉強をしなくても、進学できない・就職できないということはありません。
文科省の調査によると、実際に中学校時点で不登校だった人が20歳になった時の状況として、81.9%は就学・就業をしているという結果が出ています (*出典1)。不安に思われる勉強面に関して言えば、たしかに学校では毎日授業が進んでいるため、不登校の期間が長くなれば長くなるほど、勉強の遅れは生じてしまいます。
しかし、学校の授業は1教科50分程度で、クラス全員の理解を得ながら進みます。また、当然5教科以外の活動もあります。つまり、学校での勉強のスピードはさほど速くなく、1年を通して学ぶ量も膨大ということはないため、個人で効率よくやれば問題演習を含めても、数週間〜数ヶ月で取り戻すことができます。よって、不登校のお子さんが勉強しなくても将来に大きな支障をきたすことはないといえます。
勉強しないことの懸念点はある?
一方で、不登校のお子さんが長い間勉強しないことで精神的なダメージが生じる可能性があると考えられます。以下に5つの具体例を挙げます。
1. 自己肯定感の低下
不登校になったうえに勉強をしないことで、お子さんの「自分はダメな人間だ」「どうせやっても無理だ」という自己肯定の気持ちが強くなり、最初から諦めたり現実逃避してしまったりする可能性があります。それにより学力や集中力が低下し、自分に対する自信がなくなってしまうと考えられます。
2. 将来への不安
学校に通わないことで、勉強が遅れ、将来の進路に対する不安を感じる可能性があります。例えば、進学や就職に必要な学力が不足していたり、資格がないと感じると、進学や就職が難しくなると考え、精神的なストレスにつながります。このような不安は、自己効力感の低下を引き起こす要因となります。
3. 社会的な比較とプレッシャー
同級生や友達が学校で勉強している間、自分だけが勉強をしていないと感じることで、孤独感や疎外感を深める可能性があります。周囲の人々と自分を比較し、「自分だけが取り残されている」という感覚が強まると、プレッシャーを感じてしまうと考えられます。
4. 周囲の期待に応えられないことへのプレッシャー
周囲の人々の期待に応えられないと感じると、失望感や罪悪感が生じる可能性があります。特に、保護者や教師が「勉強をしなければならない」と強く言う場合、その期待に応えられないことで自己否定感が強まり、自分を追い詰めてしまうと考えられます。
5. 生活リズムの乱れ
不登校のお子さんが勉強をしないことで、生活リズムが乱れる可能性があります。たとえば、スマホやゲームばかりして夜更かしをしたり、昼夜逆転の生活を送ることで、身体的な健康が損なわれ、精神的なバランスも崩れやすくなります。規則正しい生活リズムが崩れると、精神的な安定が失われ、ストレスや不安が増すことがあります。
このように、不登校のお子さんは勉強しないことさまざまな精神的ダメージが生じる可能性があり、これらが重なることで強いストレスにつながることもあります。そうならないように、家庭での過ごし方が重要になってきますね。
不登校中に勉強をしないお子さんに対して、どのように接する?
不登校のお子さんを持つ保護者の中には、「子どもにどう接していいかわからない」「本当に勉強させなくていいのか」と悩む方が多いと思います。
そのためここでは、勉強をしない不登校のお子さんに対する接し方を5つ紹介していきます。
1.勉強の遅れを心配しすぎず、まずは心を休ませる
第一に必要なこととして、お子さんの心身が回復するまで待つことが重要です。不登校というのは、お子さんの心のエネルギーが空っぽになり、回復できないことによって起こります。その理由はさまざまだと思いますが、すり減ってしまった心のエネルギーを回復しないことにはどうにもならないのです。お子さんのこれからの人生を考えると、数ヶ月、数年の時間はほんのいっときの、わずかなものに過ぎません。勉強の遅れは、このあといくらでも取り返せます。そのため、まずはお子さんの心身に目を向け、心と身体がその大きな疲労から回復し、お子さん自らが「勉強しなきゃ」「勉強しよう」と思うまで待つことが大切です。
2.勉強以外の活動をする
お子さんは何をしているときが一番生き生きとした姿を見せてくれますか。
料理をするとき?工作に熱中しているとき?映画を見ているとき?
どんなことでも、お子さんが好きなことや興味のあることに、どんどん挑戦させることが自己肯定感の向上につながります。活動を通して自信をつけたり、対人関係の学びを得たりするのも、不登校で自由に使える時間が充分にあるからこそできます。この期間にしかできないことに挑戦させてください。
3.生活リズムを整える
学校へ行かないことで生活リズムが崩れやすくなり、健康状態が悪くなったり、精神的な安定が失われたりすることにつながります。
規則正しい生活リズムを保つために、毎朝同じ時間に起きたり、散歩や体操などで体を動かしたりするようにしましょう。また、就寝前には刺激となるスマートフォンやパソコンの光を見ないことも重要です。
しかし、何をしても朝起きられなくて不登校になっているという場合には、「起立性調節障害」の可能性もあります。起立性調節障害のお子さんの3分の2が不登校で、不登校のお子さんの約半数が起立性調節障害を合併していたというデータもあるほど、不登校と関係の深い病気です。起床困難や午前中の不調等の症状が出ているようであれば、血圧の調整が上手くいっていない可能性があります。
この場合は、早めに医療機関を受診するようにしてください。(*出典2)
4.保護者が勉強する姿を見せる
学校へ行かないお子さんにとって、最も身近な大人は保護者です。保護者自身が本を読んだり、資格試験に挑戦したり、何か新しいことを楽しそうに学ぶ姿をお子さんに見せていますか。保護者が熱心に学ぶ姿を見て、お子さんが勉強を始めたり、一緒に勉強したりするきっかけになるかもしれません。
不登期間中に勉強しなかった人は、将来どのような道を歩んでいる?
「不登校の間に勉強しないような人は将来成功できないのでは?」
そう考える方も多いと思います。
しかし、不登校であったことが将来への道を妨げるようなことはありません。
実際に不登校の間勉強をせずとも、その後成功した人はたくさんいます。
今回は3人の著名人を例に挙げ、不登校期間中に勉強しなかった人が、その後どんな道を歩んでいるのかを紹介していきます。
徳井義実さん(芸人)
小学校5年生の時、学校の友人関係が上手くいかず、無視をされたことから不登校になりました。「学校には行けない」と思っていた徳井さんを救ったのは、いつもは厳しい父親の「無理して行かなくていい」の一言だったそうです。
不登校中は、ずっと趣味のラジコンばかり作って過ごしていた徳井さん。
しかしその後、自ら「このままではいけない」という気持ちになり、6年生の始業式から学校に戻ることができたそうです。
そんな過去があった徳井さんですが、現在はお笑い芸人としてテレビでたくさんの人を笑顔にする仕事をしています。ある番組では、不登校のお子さんに向けて「みんな、こんな風になれるよ」と語りかけ、未来への希望を与えました。
自らの気持ちを受け入れてくれる保護者がいて、十分に心を休ませることができたからこそ再登校につながったのかもしれません。
徳井さんの現在の活躍は、学校に行かず勉強をしない期間があっても、将来成功できないなんてことはないことを証明していますね。
(*出典3)
伊集院光さん(タレント)
小学校時代から頻繁に不登校になっていた伊集院さんですが、高校時代には地元の進学校へ入学したものの、高校のレベルについていけずに不登校気味に。高校3年生ではほとんど学校に行けていなかったそうです。
不登校のときは、NHK教育テレビをよく見ていたそうです。そこで得た知識を武器にタレントになってからクイズ番組に出ていると言っても過言ではないほどだと語っており、教育テレビの存在が伊集院さんにとって大きかったことが分かります。
また、当時の伊集院さんはお笑いが好きだったので、寄席に通っていてそこからその道を目指すようになったそうです。
現在はクイズ番組を中心にインテリタレントとしてさまざまな番組で見かける伊集院さん。不登校で勉強をしなくても、自分が好きなこと・やりたいことを突き詰めることで未来を切り開くことができました。
(*出典4)
宮本亞門さん(演出家)
幼い頃から周囲と違うものを好んでいた宮本さんは、「普通」を求められる学校に合わせようと辛さを抱えながらも努力していました。しかし、高校時代に周囲と自分のギャップに耐えられなくなり、不登校になりました。
不登校の期間中は、部屋を暗くしてひたすらレコードを聴いていたそうです。宮本さんは、当時の感受性の鋭い時期に繰り返し音楽を聴いた経験が、自らの演出家としての原点になっている気がすると語っており、本人にとって自分と向き合う必要な時間だったのかもしれませんね。
現在では演出家として国内外で活躍している宮本さん。悩みを抱える若い世代の人々への言葉として、「若い頃はとにかく将来を悲観しがちだが、人生は想像した通りにはならない」「今、僕がこんなに楽しく仕事ができるようになるなんて、昔は思ってもみなかった」と語っています。
学校に行かず勉強しないことは決して悪いことではなく、宮本さんのように将来の道につながることもあるのです。
(*出典5)
不登校のお子さんに勉強させる方法
無理に勉強させることは不登校のお子さんにとって良くないことですが、長い間全くしないわけにもいかないですよね。そのため、最低限の勉強が必要となった時、お子さんに無理なく勉強させられる方法を3つ紹介していきます。
1. 興味を引く教材や方法を活用
いきなり、学校の勉強のように堅くて難しい教材をさせようとしても、お子さんは勉強をする気にならず上手くいかないのではないでしょうか。まずは、勉強を楽しく感じさせ自主学習を続けられるように、興味を引く教材や方法を取り入れることが大切です。具体的な方法として以下の4つを参考にしてみてください。
①ゲーム化する
学習内容をゲームにすることで、気軽に楽しく勉強できるようになります。たとえば、歴史のクイズや数学のパズルゲームなどを取り入れるといいのではないでしょうか。
②実践的な学習をする
家庭で簡単な理科の実験をしたり、フィールドワークで社会の勉強をしたりするなど、実際に手や身体を動かして学ぶ方法を取り入れます。より興味を持って学ぶことができ、深い理解にもつながります。
③趣味と結びつける
お子さんが興味を持っていること(スポーツや音楽等)と学習を結びつける方法です。たとえば、好きなスポーツ選手の国について調べる、音楽の歴史を学ぶなど、興味を持てるテーマを通じた学習で勉強へのハードルを下げてあげましょう。
④視覚的に分かる教材を利用する
動画や図解など、視覚的にわかりやすい教材を使うことで、理解が深まりやすくなります。YouTubeの教育チャンネルや学習アプリなども活用し、「分かる」「できる」体験をたくさんさせましょう。
2. オンライン学習の活用
オンライン学習は、不登校のお子さんが自分のペースで自分のレベルに合った学習を進めることができるため、非常に有効な勉強法です。以下はオンライン学習の具体的な流れになります。
①学習プラットフォームを選択する
Khan Academy(カーンアカデミー)、Coursera(コーセラ)、Udemy(ユーデミ―)、スタディサプリなど、さまざまな学習プラットフォームがあります。自分の学年や学習レベルに合ったものを選びましょう。
②1日のスケジュールを作成する
1日の中で、どの時間にどれぐらい勉強するのかをお子さんと相談して決めます。たとえば、午前中の1時間や夕方の30分など、短い時間から始めるようにし、少しずつ伸ばしていくなど無理なく勉強に慣れさせていくことが大切です。
③具体的な目標を設定する
毎日の学習目標を設定し、勉強をした達成感を得られるようにすることが大切です。たとえば、「今日は数学の問題を5問解く」「英語の単語を10個覚える」など、初めのうちは達成可能な小さな目標を設定すると、達成感を得られモチベーションの維持につながります。
④実践型の学習を行う
動画講義を見るだけでなく、お子さん自身が実践的な問題やクイズに挑戦する機会を設けることで、学習内容を定着させることができます。お子さんに合った教材を活用し、確実に力をつけていくようにしましょう。
3. 家庭教師やオンラインチューターの利用
家庭教師やオンラインチューターは、個別に学習をサポートしてくれるため、不登校のお子さんが効率よく学ぶことができる方法ではないでしょうか。
この勉強法のメリットとして以下の3つが挙げられます。
①柔軟なスケジュール調整ができる
勉強の時間を固定せず、お子さんの調子や気分に合わせてスケジュールを調整できます。疲れているときや集中できないときは無理に勉強させずリラックスさせるといった柔軟な対応も可能になります。
②個別に合わせた指導をしてくれる
苦手な科目や特定の問題に集中して取り組むことができ、分からないことがあってもすぐに質問することができます。また、学習の進度や到達度を管理することは自主学習ではなかなか難しいと思われますが、家庭教師であればその管理はもちろんのこと、お子さんに合わせて最適な学習方法を提案してくれます。
③相談相手になってくれる
不登校のお子さんに理解がある講師や実際に不登校経験のある講師を選ぶことで良き相談相手にもなるかもしれません。
以上、3つの方法を紹介しましたが、お子さんのペースや興味を尊重しながら、少しずつ学習習慣を取り戻していくことが大切です。無理なく勉強を続けられる環境を作ることで、勉強を支えてあげましょう。
不登校のお子さんが勉強しなくても良い理由は?
一言でいうと、「心と身体を休めるため」です。人間関係・進路・勉強・先生・授業など考えられる原因はさまざまありますが、お子さんはそれらに疲弊し学校から離れたいという思いから不登校になるのです。お子さんも、学校に行かなくてはいけないと思っているものの、その気持ちよりも「行きたくない」「行けない」という気持ちが上回っているのです。そんな心配や焦りを感じている時に、無理やり勉強させたり、無理やり学校に行かせようとしたりするとお子さんはどう思うでしょうか。心や身体を休めることもできず、さらに苦しい気持ちにさせてしまうのではないでしょうか。また、保護者が必要以上に心配しすぎないようにすることも大切です。その焦りがお子さんに伝わってしまい、学校に行けていないことにより不安を感じ始め、精神状態が悪化してしまう可能性があります。
不登校中の勉強の遅れは十分取り返すことができます。 また、不登校でもお子さんの頑張り次第で進学・就職することも可能です。これからの長い人生の中で不登校になっているこの期間はほんの少し、わずかなものにしかすぎません。今後の長い人生を見据え、今後頑張るための休息期間だと思う位の感覚で接し、お子さんが充分に心と身体を休ませることができてお子さん自らが「勉強しよう」とやる気になったら付き合ってあげる程度で大丈夫です。
まずは、勉強することよりもお子さんが抱えている心と体の疲労から回復させることが大切です。 お子さんの精神的・心身的ケアをすることから行いましょう。
(*出典6)
また、家庭だけでは対処が難しい場合もあります。そんなときは、専門家の助けを借りることを検討してみてください。特に、オンラインフリースクール「シンガク」では、不登校のお子さんの学習支援や自立支援を行っています。無料の個別説明会では、お子さんの状況に合わせたアドバイスやプランのご提案を行っておりますので、以下よりお気軽にご参加くださいね。
【出典一覧】
*出典1 文部科学省「「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)
*出典2 社会福祉法人恩賜財団済生会「子どもに起こりやすい起立性調節障害」
参考箇所:不登校中に勉強をしない子どもに対して、どのように接する?
*出典3 マイナビニュース「徳井義実、不登校の子供たちへ「こんな風になれるよ」 自身も小5で経験」
参考箇所:不登校中に勉強しなかった人は、将来どのような道を歩んでいる?
*出典4 NHKアーカイブス「スペシャルインタビュー 伊集院 光」
参考箇所:不登校中に勉強しなかった人は、将来どのような道を歩んでいる?
*出典5 厚生労働省「シリーズインタビュー「生きる力」第五回 宮本亜門さん(演出家)」
参考箇所:不登校中に勉強しなかった人は、将来どのような道を歩んでいる?
*出典6 学研オンエア「【中学生】不登校で勉強しない子どもの理由と親ができること」
参考箇所:不登校中に勉強しなくても良い理由は?