「学校に行くのが不安」そんな気持ちがあるお子さんのために出来ること

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監修:中村洸太

監修:中村洸太

博士(ヒューマン・ケア科学)、臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士、池袋心理教育研究所代表、駿河台大学・聖学院大学・目白大学・ルーテル学院大学兼任講師 大学院修了後、心療内科・精神科クリニックや大学病院での勤務を経て、現在は、働くひとやその組織のメンタルヘルス支援などに関わる一方で、スクールカウンセラーとしても活動。小学校から高校生まで幅広く関わる。その他に、性的マイノリティのメンタルヘルス支援や弁護士向けのメンタルヘルス支援、オンラインを用いた臨床活動の研究や実践などを行う。

目次

不登校の児童生徒は増加の一途を辿っており、背景には様々な要因が存在しています。

厚生労働省による不登校の定義は以下の通りです。

’学年中、連続または断続して30日以上学校を休んでいる児童生徒」「何らかの心理的、情緒的、身体的、社会的要因・背景(病気・経済的理由によるものを除く)により、学校に通っていない、通いたくても通えない児童生徒’
引用:文部科学省|不登校の現状に関する認識

不登校のきっかけには様々なものがありますが、「令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要」によると、小学生の不登校要因は「先生のこと(30%)」、「身体の不調(27%)」、「生活リズムの乱れ(26%)」が上位の回答でした。

また、2割強は、「きっかけが何か自分でもよくわからない」という回答がみられます。

お子さんの中には、言いようがない漠然とした「不安」を抱えており、それをきっかけに不登校になる人もいるかもしれません。

今回は、不安と不登校について、解説していきます。

(*出典1)文部科学省|令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要

大前提として不登校は悪いことではない

「学校に行けなくて大丈夫かな」「不登校になってしまったらどうしよう」などと思う方もいるかもしれません。不安がある子であればその気持ちはなかなか拭うのが難しくて、葛藤状態になっている人も少なくないかもしれません。

しかし、不登校はお子さんが必要に応じて「一時的に心身を休めている状態」でもあり、文部科学省でも述べられている通り、問題行動ではないと考えるのが一般的になってきました。

不登校傾向や不登校の状態であることに関して、過度に心配したり、どうにか学校に行かせようとするのではなく、まずは心をおおらかに、自宅を安心して過ごせるような場所にすることが肝要だと思います。特に不安を感じているような場合には、まずは安心を感じられることが大事になってきます。安心のベースがあるから、ストレスがかかるようなことにも取り組めるようになるということがあります。

なので、不安が強いような場合には、不登校の要因や、将来について考えるのは安心をしっかりと構築してからでも遅くはないでしょう。

ただし、お子さん自身が心身を回復させ、エネルギーを充電すべく気持ちや身体を休めることは重要ですが、家でゲームや動画などが無制限に楽しめて、やりたくないことはやらなくていいという環境を用意することが良いかというと、それは休むこととは少し違います。

嫌なことを全て拒否してそれがまかり通る環境になってしまうと、誤学習が生じてしまう可能性もあります。お子さんにとって嫌なものを排除していく環境を作成するというよりは、嫌な気持ちがあることを受け止めつつ、どうしていくと嫌なことに対峙ができそうか、とか、少しずつクリアしていくにはどういうステップが踏めそうかなどを一緒に考えていくようなことも大切にしていきましょう。

不安の要因について話し合える状況を作ることが大事

「不安」が原因で学校に行けないお子さんが抱える不安には「勉強に対する不安」「人間関係の不安」「将来の不安」など、様々な不安があります。

その不安を取り除くことが出来れば、再び学校に行ったり、前向きなモチベーションが湧いてくるかもしれません。しかし、その不安の正体は漠然としていることも少なくありません。そして、多くの場合に「不安」は「こうなったらどうしよう」という予期不安が多いものです。つまり、先々の不安は現時点では簡単には取り除けないことも少なくありません。その意味で、不安はあれどもその不安の正体がわかるようになったり、不安を抱えていられるようになることも大切です。

また「宿題が終わっていなから怒られると思うと不安」と話すようなお子さんがいた時に、「宿題は終わってなくてもいいから、学校に行こうか」というと、それでもいけない場合もあるので「不安」は、必ずしも直接の要因ではない場合などもあります。

いずれにしても、お子さんと不安について話したり、相談できるような関係性を築くことは重要です。関係性を築くためには、「話しても大丈夫」「ちゃんと自分の思っていることを聞いてくれる」とお子さんが感じられることが肝です。

自信をなくしている子や学校に行けていない自分をダメな自分と思っているお子さんも少なくはありませんので、そんな自分の話を否定せずに聞いてもらえると感じられるようなコミュニケーションの持ち方は重要です。そして、家庭が安心して休んでいられる場所であり、家族に自分の不安や悩みを打ち明けられる関係性ができると望ましいです。

もちろん、お子さんが相談できる相手は家族以外でも問題ありません。お子さんが信頼している友人や親戚、専門機関の先生など誰でも構いません。

お子さんが自分の不安を自分で抱えていられるような関係性を築くことができる状況を作っていくことを長期的な目線で考えていきたいものです。

不安障害という疾患もある

大勢の人の前で話すときや大事な試験のとき、緊張して汗をかいたり、心臓がドキドキしたりするのは当たり前の反応です。でも心配や不安が過度になりすぎて、日常生活に影響が出ていたら、それは不安障害かもしれません。

不安障害とは、精神的な不安により、こころや体に起きる変化についての総称です。

厚生労働省のサイトでは代表的なものとしていくつか紹介がされています。

(*出典2)厚生労働省|こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~

その中でも、社会不安障害(社会恐怖)、全般性不安障害などは、人との関わりや生活上の不安などで極度の不安になる状態になるものといわれていますし、パニック障害などは芸能人などで公表する方も増えてきているので耳にしたことがあるひともいるかもしれません。これらの不安障害が不登校の要因になっている可能性もあるかもしれません。

日常生活に影響が出るような不安状態が長く続いている場合は、専門機関の受診も検討するのがいいでしょう。

不安障害とは?

国立精神・神経センターに入院した不登校児童106名を対象とした診断によると、多い順に「不安・恐怖群,適応障害群,身体化群,抑うつ群」といった疾患が見られたそうです。

(*出典3)独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所|不登校児童生徒にみられる情緒及び行動の障害

不登校の要因となる精神疾患の中では「不安・恐怖」が最も多く、お子さんが不登校となる精神的な要因の中では無視できないものといえるでしょう。

具体的には「全般性不安障害」「社会恐怖(社会不安障害)」「分離不安障害」などがありますので、以下のサイトなどの情報も参考にしてみてください。

(*出典2)厚生労働省|こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~

【まとめ】

不登校状態にあるお子さんの気持ちは、第三者が容易に想像し測れるものではありませんが、お子さんの気持ちの中に「不安」が必要以上に存在している可能性は考えられます。

また、お子さんに不登校の傾向があったり、実際に不登校の状態である場合には、保護者の方も同じように多かれ少なかれ不安を抱えていることと思います。

しかし、保護者が焦って、無理に学校に行かせようとしたり、お子さんに対して過度に気を使ってしまったりすると、お子さんにとってはかえって負担となり、結果として不登校の状態が長期化したりすることもあるかと思います。

不登校の状態にあるお子さんは、自宅で心身を休めている状態のことも少なくありません。まずは安心を再構築し、落ち着いて回復に専念できるよう、学校や専門機関も活用しながら、お子さんの様子を観察しながら、必要に応じて前に進んでいくための準備をしていきましょう。

【出典一覧】

*1 文部科学省|令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要
参考箇所:冒頭

*2 厚生労働省|こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~
参考箇所:不安障害という疾患もある

*3 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所|不登校児童生徒にみられる情緒及び行動の障害
参考箇所:不安障害とは?

監修コメント

お子さんが不安を訴える場合には、まずは安心感が大事であるという話でした。

お子さんが不安を訴えているときに「大丈夫だよ」と励まして安心できるように声をかけたくなるのは、保護者としては理解できる話です。

記事の中にもありましたが、不安障害や強迫性障害などの可能性もありますので、安心の構築は大事です。

ただ、安心だけあればいいかというと、少し違う考え方も大事です。

もちろん、安心感は大事なのですが「不安を訴えれば」「保護者が励ましてくれる」という構図になってしまって、保護者に頼りっきりになってしまうと、そのお子さんが自分で不安を対処する力が伸びないということもあります。

保護者に頼れるようになることの重要さもありますし、安心があることも重要ではあります。

しかし、不安に自分で対処できるようになることも、同じように大事なポイントです。

特に、失敗することへの不安が強いお子さんについては「失敗しないように」ということだけじゃなくて、「失敗しても大丈夫」という感覚も大事にしてほしいと思います。

そのためには、例えば、親子で一緒に失敗をしてみるのはいかがでしょうか。

意図的に失敗をする計画を立てるのです。

もちろん危険を伴うようなものは避けましょう。

例えば、時間に余裕があるときに買い忘れをしてもう一回お店に戻ってみるとか、

食べられる範囲で料理を失敗してみたり、時間に余裕を持って電車に乗り遅れてもいいかもしれません。

そうやって、計画的に失敗することを親子で経験してみましょう。

失敗したときに、ミスを悔やむよりも、「あちゃー失敗してしまった」「思ったよりも大丈夫だったね」「天は味方をしてくれているね」と失敗を笑い飛ばしてみてみるのです。

保護者自身が失敗に不安があったりして心配な時は、まずはご自身でやってみるのもいいかもしれません。

失敗しないように備えるのも大事ですが、失敗しても大丈夫、挽回できるんだ、と体験できることも、大事なことだと思います。

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