いじめが原因の不登校|前兆やお子さんのためにできるサポートも解説

近年、増加傾向にある不登校の児童生徒。 不登校の児童や生徒の数が増えているということは、不登校の児童や生徒の保護者の数も増えていると考えることができます。 不登校の背景には、様々な要因があるため、万人に共通の不登校の対応や支援があるわけでも、共通の正解があるわけでもありません。 不登校の様々な要因の一つとして、いじめが挙げられます。今回はいじめが原因の不登校に絞って、その前兆やお子さんがそれ以上傷つかないためにできるサポートについて紹介します。

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目次

不登校の原因はお子さんによってさまざまであり、本記事のテーマである「いじめ」も不登校の原因の一としてあげられることがあります。

文部科学省が行った調査では、学校に行きづらいと感じ始めたきっかけとして、小中学生ともに「友達からのいじめや嫌がらせ」が5番目に多い結果となっています。

不登校が長引くと、出席日数が少なくなって進級や卒業が難しくなったり、進学に影響が出たりすることもあるので、保護者としても心配になることかと思います。しかし、そこにいじめの問題があるとすると、単に出席日数だけの問題ではなく、同級生からいじめられるという経験から、周囲の顔色を伺うようになったり、人との付き合いが怖いと感じるようになるお子さんも中にはいます。

いじめによる問題は子ども時代の問題だけではなく、大人になってからの対人関係の持ち方に影響を及ぼす可能性もあるため、非常に重要な問題であると考えられます。

この記事では、いじめによる不登校の現状や前兆、保護者ができるサポートの方法について解説していきます。

(*出典1)文部科学省|【概要】不登校児童生徒の実態調査結果

いじめと不登校の関係性【文部科学省調査から】

文部科学省の調査によると、いじめの認知件数は年々増加傾向にあり、2021年には過去最多の61万5,351件に達したことが明らかになっています。これは後述しますが、単にいじめが増えているということではなく、いじめが「認知」されるようになった件数が増えているということも関係していると考えられます。

また、不登校の児童生徒の人数も年々増えてきており、2021年には244,940人に上ることも報告されています。その中でも、不登校の要因が「いじめであった」と回答している人数は、244,940人中516人(0.2%)でした。

(*出典2)文部科学省|令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

上記のデータによれば、いじめの認知件数や不登校児童生徒の人数はどちらも増加傾向にある一方で、いじめが原因で不登校になったお子さんの割合は0.2%なので決して多いとは言いにくい割合です。

しかし、不登校経験のある小中学生を対象に行われた別の調査では、いじめをきっかけに不登校となるケースも多いことが明らかになっており、いじめと不登校の関係性は無視できないでしょう。何よりも、少ないから問題ではない、ということでは決してありませんし、統計には表されないいじめや「いじり」なども少なくはないと考えられるため、注意は必要です。

(*出典1)文部科学省|【概要】不登校児童生徒の実態調査結果

いじめの認知件数が増加した理由は?

いじめの認知件数の増加にはどういった背景があるのでしょうか。

ここからは、いじめの認知件数が増えている理由について解説します。

【理由1】いじめに対する認識の変化

1つ目の理由として、時代とともにいじめに対する認識が変わってきたことが挙げられます。

留意すべき点は、こうした統計はいじめの”認知”件数であるということです。

文部科学省が公表している資料によれば、以下のように「いじめの定義」は変遷してきたようです。

昭和61年度からの定義「いじめ」とは、「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。
平成6年度からの定義「いじめ」とは、「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。
平成18年度からの定義「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。 
平成25年度からの定義「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

(*出典3)文部科学省|いじめの定義の変遷

表を見ると、いじめの定義の変遷とともに、いじめと判断される内容の範囲も広くなってきていることがわかります。

かつては「そんなことくらいで」と見過ごされたり、わかってもらえずに我慢せざるを得なかったり、「いじめられる方にも原因がある」と抑圧されたり、隠されていたいじめが、いじめに対する認識の変化とともに「いじめ」として認知され、問題として認識がされるようになってきた結果として、認知件数が増加してきていることに繋がっていることも考えられます。

自治体やとある校長先生などのスタンスとしても「いじめの認知件数は多い方がいい」としていることもあります。いじめはなくなるものではない、その代わりに起きてしまったら早めに気づいて対処をする必要がある、だからこそ、この認知している数値が増えていることは、早めに気付けていることで、非常に重要な数値として捉えている見方もあるわけです。

「うちの学校(自治体)はいじめがゼロである」と認識をしていると、あるかもしれないいじめを見過ごしてしまう可能性もあるわけです。このようにいじめへの認識が少しずつアップデートしている側面もあります。

また、あくまで「認知されて報告がされた件数」であることを考えると、統計上にはカウントされていないいじめも決して少なくないということも考えられます。

【理由2】いじめ問題に対する取り組みの強化

また、いじめ問題に対する取り組みの強化も、いじめの認知件数が増加している理由の一つと考えられます。

たとえば、文部科学省の取り組みとして、以下のような取り組みが実施されています。

  • スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の充実
  • SNS等を活用した相談事業
  • 24時間子供SOSダイヤルの周知
  • 文部科学省職員によるいじめ防止対策推進法等に関する行政説明
  • いじめ防止対策に関する関係府省連絡会議の実施

(*出典4)文部科学省|いじめ対策の推進について

さらに、学校現場でも、いじめ防止対策推進法に基づき、教職員がいじめに関する研修を受ける機会が設けられるなど、いじめ問題に対する取り組みが強化されています。

また、相談の窓口なども少しずつ変化しています。

2017年9月に長野県による中高生対象のLINE相談「ひとりで悩まないで@長野」が、2週間にわたって実施された際には、従来の電話相談では1日平均0.7件(2016年度)だったのに対して、LINE相談では児童生徒からのアクセスが1日平均112.8件(電話相談の約160倍)だったそうです。

これは今まではなかなか相談できなかった中高生にとって、LINEで相談ができるというのは、非常に高いニードがあったことを表していると考えられます。この年以降、多くの自治体がLINE相談などを提供するようになってきています。

「相談をしない」ということは、悩んでいる人がいないのではなく、悩みが打ち明けにくい状況が環境としてあることが考えられるため、悩みを打ち明けやすい環境をいかに構築するかが重要である、ということを表している出来事のように思います。

【理由3】ネットの普及によるいじめの形態の多様化

また、相談の窓口だけではなく、インターネットの普及やスマートフォンの利用、SNSの活用などから、いじめの形態が多様化していることもいじめの認知件数が増えていることにつながるかもしれません。

文部科学省のいじめの調査でも、パソコンや携帯電話等を使ったいじめ・嫌がらせの件数が年々増えていると報告されており、2021年には全体で21,900件あったと明らかになっています。

具体的には、LINEグループを一人だけ仲間外れにしたり、その人を除いたグループLINEなどで悪口を言い合ったり、特定の子が写っている写真を加工して仲間内で拡散したり、LINEのやりとりを意図的にスクリーンショットして馬鹿にするようなトラブルは日常的に起きていますし、一緒にオンラインでゲームをやっていた際にDiscordなどのチャットアプリ内で喧嘩のようになったやりとりから学校で嫌がらせに発展したりするようなこともあります。学校ではなく帰宅後のオンライン上でのやりとりから翌日の登校を怖がって嫌がるお子さんも少なくはありません。

(*出典2)文部科学省|令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

このようにオンライン上でのトラブルが原因のいじめなども少なくありませんが、証拠として残る分、他の子からの報告でトラブルに気づくことができたり、認識しやすくなっている面はあるかもしれません。

このような観点から、インターネットが普及したことで、SNSなどを通じたいじめが増えてきたこともいじめの認知件数が増えている理由の1つと考えられるかと思います。

また、それだけSNSやインターネットでのやりとりが、子どもたちにとっては当たり前のコミュニケーションツールであるということも考えられます。安易に「やめればいい」では解決しないのはこの辺りも影響しているかもしれませんね。

いじめで不登校になる際の前兆とは?

お子さんが不登校状態に入る際は、突然そのような状態になるわけではありません。

不登校状態になるまでにはいくつかの段階があり、その過程で、お子さんは何らかの前兆を示すことが多いとされます。

ここからは、いじめが原因で不登校になる際に、お子さんが示すとされるいくつかの前兆をご紹介します。

学校のことを話すのをためらう

お子さんが学校でいじめを受けていると、学校での出来事や友達のことを話すのを避けるようになることがあります。

これは、いじめを受けたことで学校に対するネガティブなイメージが強まり、学校や友達について考えたくないと思うようになることもあるでしょうし、自分がいじめられているということを恥ずかしく思うことや、情けないと自分自身が考えてしまうようなこととも関係していると考えられます。

たとえば、親子で話す中で学校に関する話題が出た際に、話をすぐに切り上げる、無関心な態度を取るなどが起こります。

もし、普段はよく話していたお子さんが急に学校の話をしなくなったら「もしかして、いじめられているのかもしれない」と注意してみる視点もひとつです。

特に、これまで仲が良かった子と突然関係性が変わってしまった場合などは、仲が良かった子と遊ばなくなったり、その子との話題を出さなくなるようなこともあります。

親や家族としては「◯◯さん最近遊びに来なくなったね」など、何気なく発した言葉から、「どうしよう・・」とドキッとしてしまうようなこともあるようです。

大事なポイントとしては、これまでの様子と違う、という点に気を配るということです。

学校へ行くのを嫌がる

変化という意味では、いじめが続き、学校への抵抗感がさらに強くなると、学校へ行くことを嫌がることが増える場合もあります。

「学校へ行くといじめられるかもしれない、でも、そのことは打ち明けられないし、もし打ち明けたら誰かに言ったことで余計にいじめが悪化するかもしれない」と考えて、気持ちが八方塞がりになってしまうこともあり、とにかく学校に行きたくないと拒否をすることもあります。

具体的には、朝の準備が遅くなったり、登校を嫌がるような様子を見せることがあります。しかし、家族にとっても朝はバタバタしていることも多いでしょうから、登校を嫌がっても、十分に話す余裕も持ちにくく「いいからとにかく行きなさい」とその場の状況を進めなくてはならないとなってしまうこともあるかと思います。

お子さんにこのような様子が見られる場合は、何か悩みや問題を抱えている可能性が高いため、適切なサポートが必要です。

朝のバタバタしている時点では結論を出さずに「帰ってきたら改めてこのことについて話す時間を作ろうか」と、少しでも余裕がある時に話をできるようにするのは大切かと思います。しかし、すぐには、言い出せないかもしれないことも多いので、理由を言わせようと躍起になるのは逆効果になることも多いので要注意です。いつもと違う様子はあるけど、なかなか話出さないような時は、まずは「あなたの味方である」「話を聞く準備はある」「困ったことがあれば一緒に考えよう」ということをまずは伝えておけると、何かあったら話をしようと安心が持てるかもしれません。

頻繁な体調不良や精神的な不調

また、いじめによるストレスは、お子さんの体調や精神状態にも影響を及ぼすこともあるわけです。

一例を挙げると、腹痛・頭痛などの身体的な不調を訴えるようになったり、あまりご飯を食べなくなるようなこともあります。

ひどい場合には、うつやパニック障害などの精神的な不調に繋がることもあります。

頭やお腹の痛みを訴える時には要注意です。身体的な問題の場合もありますが、「いじめ」があるとはなかなか言えず、体調不良などを理由に登校を拒否するようなことになっていくことがあります。

朝は症状を訴えるわりに、午後になるにつれて元気になっていくこともあるので、よく仮病といわれることもあります。しかし、その瞬間はストレスから本当に頭やお腹が痛い症状に襲われているわけです。なので、その体調不良が仮病であると言われてしまうと、余計に何も言えなくなってしまって、閉じこもってしまうことがあります。

お子さんがこういった身体的あるいは精神的な不調を頻繁に訴えている場合、無理に学校に行かせるのではなく、まずはお子さんをしっかり休ませ、適切な体と心のケアをすることが大切です。必要に応じて、医療機関の受診も大事ですが、病院を受診しても身体に問題が見られないような場合は、心理的な負担が強い可能性を考えることも重要です。

学業成績の急激な低下

いじめによって悩みやストレスを抱えているお子さんは、急に成績が悪くなることもあります。

これまで成績が安定していたお子さんが急にテストの成績が下がったり、宿題や提出物を忘れることが増えたりと、学業に対する関心が低下しているような場合は注意が必要です。

このような兆候に気づいたら、「ちゃんとやりなさい」「もっと頑張らないとダメだ」と頭ごなしに怒るのではなく、何か成績が下がるようなことで思い当たることがないかなどお子さんの言い分を聞きつつ、話し合いながら、適切なサポートをしていくことが大切です。

持ち物が紛失・破損することが多い

よくあるいじめの一例として、持ち物を盗まれたり、壊されたりといったことがあります。

そのため、お子さんの持ち物が頻繁に無くなったり、壊れたりする場合は、いじめが関係している可能性も考えられます。

とはいえ、本当のことを話すには勇気も必要です。自分で失くしたり壊したりしてしまったと話す子も少なくありません。保護者の立場としては、事実関係をはっきりさせたいという気持ちも強いでしょうし、一刻も早くいじめがあるなら止めなくてはいけないと考えると思いますが、言えない状況にあるお子さんなりにいじめの辛さや自分の尊厳を守ろうとすることと葛藤している状態でもあるとも考えられるので、一刻も早く止めることは重要でありますが、そこのお子さんなりに葛藤があることも念頭において置けると良いかと思います。

また、学校の様子はなかなか保護者としては見えにくい状況でもあるかと思いますので、必要に応じて学校や教職員にも様子を見守ってもらうこともひとつです。

遅刻や早退が増えた

上述の学校に行くのを嫌がるのと同様に、お子さんが遅刻しがちになったり、早退しがちになったりしている場合にも、いじめの可能性は考えられます。

遅刻や欠席が増えるというのは、学校に行くことが辛くなり、学校で過ごす時間を最小限にしたいという気持ちの現れである場合があります。

また、登校や下校の時間をずらすことで、いじめを避けようとする意図もあるかもしれません。

中には、いつも通りに学校に行っていると思ったら、途中で寄り道などをしているようなことなどもあります。

このように、お子さんの遅刻や早退が増えた場合はいじめのサインの可能性もあるので、頭ごなしに怒ることから始めずに、話を聞くことも大切です。

自分の部屋に閉じこもる時間が増えた

自分の部屋に閉じこもる時間が増えたという場合もいじめの前兆の場合があります。

自分だけの安全な場所に閉じこもりたいという願望もあるのかもしれません。反抗期なども含めて、自分自身の世界観を確立していく中で家族と距離をおきたいようなこともあるので、必ずしもいじめとは限らないですが「変化」という観点では注意をしたいタイミングでもあるかと思います。

しかし、自分の部屋で過ごす時間が増えると、家族とのコミュニケーションが減り、保護者がお子さんの様子に気づきにくくなるという悪循環になる場合もあります。

成長の過程の中で自分の部屋にこもりがちな場合もありますが、お子さんが自分の部屋にこもる時間が長くなった場合に、元気のない様子が見られたり感情的にもおかしい様子が気になるようであれば、いじめがある可能性を疑うのもひとつかもしれません。

理由をはっきり言わないアザやキズアトがある

いじめられているお子さんの中には、暴力を受けているケースもあります。また、暴力を受けている場合、お子さんの体にアザやキズアトができてしまう場合があります。

しかし、お子さんは恐怖心や恥ずかしさから、アザやキズアトの理由を言おうとしないことも多いものです。

暴力に発展している場合は、いじめがかなりエスカレートしている状況も考えられるので、お子さんの体にアザやキズアトを見つけた場合には、これ以上いじめがエスカレートしないようにするためにも、早めに対応することが大切です。

寝つきが悪かったり、夜眠れなかったりする日が続く

学校などでいじめられていると、ストレスや恐怖心から、寝つきが悪かったり、夜眠れなかったりする日が続く場合があります。

また、夜中に目覚めてしまい、十分な睡眠が取れないといったことも起こります。

睡眠不足が続くと、体調が悪化するだけでなく、精神的な不調も引き起こすため、学校に行くことが難しくなり、不登校になってしまう可能性も高まります。また、夜眠れない状況から、昼夜逆転になってしまって生活リズムが崩れてしまうようなことも少なくありません。この場合、昼夜逆転の方に焦点が当たりがちですが、その背景にいじめがある可能性を考えることも重要です。

お子さんの寝つきが悪かったり、夜十分に寝れていなかったりする場合は、可能性の一つとしていじめを想定することも大切です。

パソコンやスマホをいつも気にしている

上述の通り、近年のいじめは、学校の中だけでなく、インターネット上でのいじめ(ネットいじめ)も増えています。

お子さんがパソコンやスマホをいつも気にしている場合、ネットいじめを受けている可能性もあります。

また、ネットいじめは、その匿名性からどんどんエスカレートしていきやすいことにも注意が必要です。

そのため、お子さんがパソコンやスマホを確認する回数が増えてきたら、ネットいじめを受けていないかの事実確認を行い、状況に応じて適切な対応を取ることも大切です。

自分でネットから離れるのが難しいから、スマホやPCを取り上げられてしまった方が言い訳がしやすいという子もいます。しかし、離れられない背景には反応しないと余計にいじめられると脅迫的な状況になっているお子さんもいるので、対応についてもお子さんの置かれている状況や性格などもよく考えて行うことが大切です。

ここまでのいじめの前兆は以下のサイン発見シートを元に作成しています。良かったら合わせてご活用してみてください。

(*出典5)文部科学省|いじめのサイン発見シート

いじめが原因で不登校になった場合に保護者ができるサポートは?

いじめが原因でお子さんが不登校になった場合、保護者としては一刻も早くお子さんを助けたいと思うことと思います。

ここからは、いじめが原因で不登校になったお子さんを支えるために保護者としてできることについて考えていきましょう。

お子さんの気持ちへの共感を示す

まずは、よく言われることですが、お子さんの気持ちに寄り添い、共感を示すことは大切です。

いじめられているお子さんは、自分の気持ちを理解してもらえないと感じていることが多く、孤独感や不安な気持ちを抱えています。

そのような場合、保護者としては、お子さんが抱える悩みや苦しみに耳を傾け、お子さんの味方となる姿勢を示すことが大切です。

お子さんの話を聞く際は、お子さんを否定するような発言は避け、安心して話せるような雰囲気作りをすることも大切です。

保護者の立場からすると、甘いことを言っているように感じたり、解決できるようにと思ってこうすればいいというアドバイスを授けようとすることが多いのですが、まずは「最初は聴くに徹する」ことを意識してみてください。

保護者からのアドバイスも、ハマるような場合にはうまく行くこともあるのですが、「それができないから辛いのに、結局親はわかってくれない」とアドバイスが逆に心を閉ざしてしまう方にいってしまう場合もあります。

アドバイスをするにしても「こんなアイディアもあるけど、どう思う?」など、そのアドバイスの実行者はお子さんであることを意識した声かけを行うと、一緒に作戦を考えてくれたり、うまくできない気持ちをわかってくれてありがたい、という気持ちになって心強い存在に感じることもあるかと思います。

お子さんを励ます声かけをする

お子さんを励ます声かけをすることも大切です。

いじめられていたお子さんは、自己肯定感が下がり、自分に自信を持てなくなっているケースも多いです。

そんなときは、お子さんの良いところや頑張っているところを見つけ、積極的に褒めてあげるようにしましょう。その際には、無理矢理に褒める、というよりは、頑張っている過程をみているよというメッセージや、大変な状況でも頑張っていることの労いなどが大事かと思います。

「自分なんて存在している意味がない」ということを話すお子さんもいますが、学校は生活の多くを占める場所ではあるので重要ではありますが、その学校での生活はその子の全てではありません。学校での生活に視野が狭くなっているような場合は、それだけが全てではないということを伝えてあげて欲しいところです。

特に、いじめの場合は、いかなる理由があったとしても、いじめを肯定するものではありません。いじめについては、している側が悪いということをしっかりと伝えてあげてください。

学校や教育関係者と連携し、いじめの解決を図る

学校でのいじめが原因で不登校になった場合、学校や教育関係者と連携して解決を図ることも重要です。

お子さんがいじめを受けていることやいじめが原因で不登校になっていることを学校側に伝え、具体的な対策を相談していきましょう。また、お子さんの学校での様子についても詳しく聞くことで、家では見えないお子さんの様子を知ることで考えられる対応策などもあるかと思います。

お子さんの立場からすると、学校に伝えるのを嫌がる場合も少なくはありません。その場合には、子どもには内密ではあることを伝えた上で、担任の先生などに状況を共有するようなことで様子を見ることもあります。初期段階であれば、学校で担任がそれとなく声をかけたり、グループ分けを考慮したりと環境調整を行うことで、いじめが発生する機会自体を減らすこともできたり、いじめが発展してしまっているような状況であれば、学校側としても抑止のための対応を取ることなども可能かと思います。

その意味でも、学校への連絡は、一度共有するだけではなくこまめに取り続けるようにしたほうが、進捗なども見えやすいのではないかと思います。あまり学校に頻繁に連絡をするのは迷惑になるのではないかと心配をされる保護者もいますが、その辺りの懸念も伝えつつ、お話をされると良いかもしれません。そうすることで、学校の状況も把握できるため、不登校の場合には、学校復帰をすることになった場合などもスムーズに復帰しやすいかと思います。

必要に応じて専門機関を利用する

学校側とうまく共有ができていればいいのですが、うまくいかない場合などもございます。その場合は、必要に応じていじめや不登校に関する専門機関を利用するのも良いでしょう。

専門機関に相談することで、お子さんのためにできることやいじめが原因の不登校に対する対応方法を広く知ることができます。学校はひとつの国のようなもので、独自の雰囲気があったり、その年度ごとの教員やお子さんたちの様子でも雰囲気や暗黙的な事柄が変わってくることも多いものです。その視点に囚われてしまうことで苦しいこともあるので、客観的な視点の話を聴くだけでも、視野が広がって感じやすくなるような場合もあるわけです。

家庭内や学校だけではわからないこともあるため、必要に応じて専門機関に相談することも選択肢の一つとして検討してみてください。

以下は、いじめや不登校などの悩みを相談できる専門機関の例です。

みんなの人権110番TEL:0570-003-110
全国の法務局・地方法務局で開設している、差別や虐待、ハラスメントなど、様々な人権問題についての相談を受け付ける相談電話です。
子どもの人権110番TEL:0120-007-110
全国の法務局・地方法務局で開設している、いじめや不登校などの問題を相談できる専用相談電話です。お子さんだけでなく、保護者の方も利用できます。
24時間子供SOSダイヤルTEL:0120-078-310
文部科学省が開設している、いつでもどこでもいじめなどの問題を相談できる電話です。電話をかけると、原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関に接続されます。
チャイルドラインTEL:0120-99-7777
18歳までのお子さんのための相談先です。

上記以外にも、我々が運営するツナグバのように、民間が運営する相談場所も多数あります。

ツナグバには、お子さん・保護者が利用できるQ&A機能があります。匿名かつオンラインで相談できるので、何か相談したいことがある場合は活用してみてください。

ツナグバQ&Aはこちら

学校復帰だけじゃない!不登校になった際のその後の選択肢

いじめが原因で不登校になった場合、学校復帰だけが解決策ではありません。

いじめが原因で不登校になった場合、学校へのネガティブなイメージが無くならず、復学することに対して抵抗を感じるお子さんもいるでしょう。何より、自分自身を傷つけた人がいる場所に戻ることへの不安や苦痛もあるものと考えられます。

そんな場合は、無理に元の学校に戻ろうとするのではなく、他の選択肢も含めて検討してみてください。

具体的には、

  • 別室登校の利用
  • 他の学校へ転校する
  • 通信制高校やサポート校など、個別対応が可能な教育機関への進学
  • フリースクールに通う

などが考えられます。

いじめられた側が環境を変えなくてはいけない状況に納得がいかない場合もあるかと思います。それはもっともな感情かと思います。中には、いじめを行った側が教室に入らないように対応をするようなこともありますが、残念ながら多くはないのが現状です。納得はいかないにしても、少しでも多くの時間をお子さんが安心な場で学ぶことができるようにするためには、見切りをつけてしまうこともひとつなのかもしれません。

フリースクールについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

フリースクールとは?基本情報から学費・進学可否まで幅広く解説

【まとめ】お子さんの気持ちに寄り添い、励ますような声かけを

いじめや不登校は、些細なきっかけでどんなお子さんにも起こりうるものです。

お子さんがいじめによって不登校になった場合、保護者としては「どのようにお子さんをサポートすればいいのか」「学校に行けないままで大丈夫かな」と不安に思うことでしょう。特に、いじめはお子さん自身の尊厳を傷つけるものですので、早めの対応やお子さんへのケアが重要になってきます。

お子さんの想いや状況などをよく聴きながら、お子さんの気持ちを尊重しつつ、傷ついている様子がみられる場合は、お子さんの尊厳を取り戻すための関わりをしていくことも重要です。ご家庭でのサポートは重要ですが、いじめについては相手がいるわけですし、学校という場所で起きている以上、必要に応じて学校と連携をとったりしていくことも重要です。

保護者の方自身も動揺することも多いかと思いますので、学校への相談の仕方などから専門機関に相談をしてみることもひとつです。

保護者の方自身も、お一人で抱え込まないようにしていくことを大切にしてください。

【出典一覧】

*1 文部科学省|【概要】不登校児童生徒の実態調査結果
参考箇所:最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ

*2 文部科学省|令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
参考箇所:いじめの認知件数の推移/いじめの態様別状況/不登校児童生徒数の推移/不登校の要因

*3 文部科学省|いじめの定義の変遷
参考箇所:いじめの認知件数が増加した理由は?

*4 文部科学省|いじめ対策の推進について
参考箇所:文部科学省におけるいじめ対策について

*5 文部科学省|いじめのサイン発見シート
参考箇所:いじめで不登校になる際の前兆とは?

【監修者のコメント】

昨今はLINEやInstagramなどのSNS上で起こるいじめも少なくはないので、学校で面と向かっている時以外にも気を張らなくてはいけない状況がよくみられます。

昔は昔で、いじめへの認識の違いなどもあったでしょうし、その時代ごとのいじめの辛さがあると思われるため、安易に比較はできないものではあると考えられますが、学校にいるときでも、家にいるときでも、いじめが起きるというのは気が休まる時がないとも考えられるため、しんどいお子さんも少なくないことと思います。

ただし、いかなる時代のいじめであっても、いじめは肯定されるものではありません。しかし、いじめというものは残念ながら起きてしまうものでもあるかと思います。

だからこそ、いじめについては個人の問題だけに集約せずに、早期に気づいて対応することができるような体制を整えておくことも重要であると考えられます。いじめは個人の問題ではなく、集団の中で起きる問題として取り組む姿勢が大切です。

いじめ対策で重要なことは、「認識すること(Recognize)、対応すること(Respond)、報告すること(Report)」という3つのRがあるという考え方があります。この枠組みを中心に対応を考えていくことも重要です。

早期にいじめを認識するためにも、今回挙げられているようないじめの前兆とされるようなサインを小さなことでも見過ごさずにいることは大切です。この点については、多くの方も同意されるのではないかと思いますが、実際の生活の中では「される側にも色々問題があって」とか「いいから学校にいきなさい」「そんなことくらいで」という言葉が出てしまうようなことも少なくありません。

そのような言葉は、日頃の中では出てしまうこともあるかもしれません。実際にはそのお子さん側に何かきっかけとなるようなことはあるかもしれませんが、お子さん自身が自分の悩みや想いを大切にしてもらえているという関わりを意識することは大事にして欲しいと思います。

また「いじめ」と「からかい」の境界線は曖昧なところもありますが、お子さん自身も「いじめと言わないまでも他の子どもにからかわれる」という認識で、学校に行くことに困難を抱える子どもも少なくありません。からかいは、深刻なものにも発展しがちな非常に危険な火種でもあるかと思いますので、決して軽視するものではありません。

「そこまで深刻ではないからかい」というのは、子どもの中でもよく見られることですが、お子さんが特に敏感に反応して、結果として学校に行きたくないと思っている可能性は十分にあります。

そのような場合、まずはからかっている子どもに対して「反応しないこと」が推奨されます。からかい返したり、笑い飛ばしたりすることによって、からかいを逸らそうとするお子さんもいますが、からかわれることにとても悩んでいる子どももいます。

そのような場合には、バカにされることを無視するように勧めることがあります。挑発には乗らないように伝えることです。からかってくる子どもの多くは、相手からの反応に注目しているので、反応が得られなかった場合には、注意はよそに移っていくことが多いとされます。

カウンセリングなどの中では、からかいに対する台詞や対処法を考えるために、カウンセラー側がからかってくる子どもの役割を演じて、からかいに対するエクスポージャーを実施していくようなこともあります。

いじめによる不登校などの場合には、前兆に気づくこと、安全な状況の確保、具体的な対応策なども重要です。保護者や学校の大人など、自分の周りに誰か一人でも味方がいたり、わかってくれる人がいるということが、大きな支えになることも少なくないかと思いますので、お子さんの様子が気になるような場合には、声をかけてみてあげて欲しいところです。

参考文献など

いじめ防止の3R:すべての子どもへのいじめの予防と対処

不登校の認知行動療法 保護者向けワークブック

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