起立性調節障害と不登校の関係性とは?改善や対応方法について解説

決まった時間に登校する必要がある義務教育課程において、朝起きられないという症状が出る起立性調節障害は、不登校との関連が高くなっていると思われます。身体的な不調なのに、学校に通えないことで自分を責めてしまい、次第にお子さんが自信をなくすような影響にも繋がりかねません。この記事では、起立調節障害と不登校の関係性から対応方法など解説していきます。

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監修:中村洸太

監修:中村洸太

博士(ヒューマン・ケア科学)、臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士、池袋心理教育研究所代表、駿河台大学・聖学院大学・目白大学・ルーテル学院大学兼任講師 大学院修了後、心療内科・精神科クリニックや大学病院での勤務を経て、現在は、働くひとやその組織のメンタルヘルス支援などに関わる一方で、スクールカウンセラーとしても活動。小学校から高校生まで幅広く関わる。その他に、性的マイノリティのメンタルヘルス支援や弁護士向けのメンタルヘルス支援、オンラインを用いた臨床活動の研究や実践などを行う。

目次

不登校の要因の1つに「生活リズムの乱れ」によるものがあります。

お子さんが「朝なかなか起きない」「起床後に学校へ行けないほどだるそう」などの兆候が見られる場合、起立性調節障害(OD)の可能性があります。

起立性調節障害は、不登校との関係性について言及されることも多い疾患です。

今回は、起立性調節障害と不登校について解説していきます。

起立性調節障害とは?

起立性調節障害とは、脳の血流が低下することで、朝起きられなくなってしまう疾患です。

思春期に多いと言われる疾患で、成長とともに症状が自然に改善することもあるようですが、症状が発生している間は日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

起立性調節障害の診断については医師によって行われるため、症状について思い当たる方は医療機関を受診するといいでしょう。

【参考:起立性調節障害の診断】

起立性調節障害の自律神経機能障害の診断は、10分以上臥床の後、安静時の血圧・脈拍を測定し、起立後の血圧低下からの回復時間、その後10分後まで血圧・脈拍を測定する新起立試験等によって行います。

引用符:東京逓信病院

起立性調節障害と不登校の関係性

起立性調節障害は、小学生~中学生のお子さんに多くみられる傾向があり、中でも不登校児童や生徒にみられる割合は比較的高めといえます。

  • 小学生の約5%、中学生の約10%の有病率
  • 不登校の30~40%にみられる
  • 10歳~16歳の児童生徒に多い

(*出典1)一般社団法人日本小児心身医学会|(1)起立性調節障害(OD)

そのため、決まった時間に登校する必要がある義務教育課程において、朝起きられないという症状が出る起立性調節障害は、不登校との関連が高くなっていると思われます。

ただし、不登校が起きる背景には様々な要因が絡み合っているため、一概に起立性調節障害だけが不登校の原因と決めつけてしまうのは望ましくありません。

起立性調節障害が改善したとして、不登校の状態は変わらないこともあるかと思います。

まずはお子さんの体調に注意を払いつつ、じっくりとコミュニケーションを重ねていきましょう。

起立性調節障害を起因とした不登校は、午後になるにつれて落ち着いてくることも多いので「一見すると怠けている」と勘違いされがちです。起立性調節障害は身体的な疾患であるため、どのお子さんでも起きる可能性があると考えておきましょう。

起立性調節障害の兆候について

お子さんが不登校状態になる前に、起立性調節障害の兆候に気づくことで早い段階で適切な治療を施せる可能性があります。

  • 朝起きてこない
  • 起床後もずっと気だるそうにしている
  • 起立直後に気分が悪くなる、立ち眩みが多い
  • 動機や息切れが多い
  • 学校を遅刻しがち
  • 午後は元気になる

上記の傾向や症状が見られる場合、まずは専門機関に相談してみるのがいいでしょう。

(*出典2)クリニック テルミナ|子供を不登校にする起立性調節障害(OD)

起立性調節障害は改善できる?

軽症の場合、数か月で改善するとも言われる起立性調節障害。

その改善は、日常生活から取り組めるようです。根本的な原因は自律神経の乱れと言われますが、症状は血流に関連しているため、それを意識する方法がいくつかあるとも言われています。

  • 長時間の起立状態を避ける
  • 立ち上がる時に頭をいきなり上げない(ゆっくり頭を上げる)
  • 筋力を付ける
  • 水分・塩分の摂取を意識する
  • 正しい生活リズムを心がける

症状の緩和や改善には、これらを意識することが重要なようです。ただし、症状の個人差はありますので、安易に自己判断をせずに医師に相談してみましょう。

薬物療法もあるようですので、症状が重い場合はかかりつけ医に相談するのがよいでしょう。

(*出典3)有明こどもクリニック|起立性調節障害(OD)

通信制高校や夜間学校に通学するのも方法の1つ

起立性調節障害の症状が重い場合や、改善に取り組むことが難しい場合は、リズムを合わせられる学校に切り替えることも手段の1つです。

起立性調節障害は疾患ですので、無理やりお子さんを日中の学校に通わせることは、多大な負担をかけてしまうともいえます。

しかし、身体的な不調なのに、学校に通えないことで自分を責めてしまい、次第にお子さんが自信をなくすような影響にも繋がりかねません

元いた学校に通うことは1つの手段ではありますが、お子さんの将来のために学ぶことが出来る場所は他にもあります。起立性調節障害が関連しているような際には、まずは症状や生活リズムなどを考慮に入れつつ、ペースが作れるような方法を保護者の方で情報収集をしてみると打開策が見えることもあるかと思います。

【まとめ】

起立性調節障害は、ちょうど義務教育課程の時期のお子さんに多く、不登校との関連性も多いと考えられています。

不登校状態になってしまうと、疾患の改善や学校復帰を焦ってしまうかもしれませんが、症状が改善しないままでは日中の学校に通うことは困難なことも多いものです。

現在は、通信制高校やフリースクールなど、他の選択肢も増えています。

あくまでも身体的な疾患として理解し受け止めることで、気持ちを切り替えやすくもなりますので、まずは専門機関を受診し、それぞれの施設の資料を比較検討するなど、情報収集から始めていくことをおすすめします。

【出典一覧】

*1 一般社団法人日本小児心身医学会|(1)起立性調節障害(OD)

参考箇所:起立性調節障害と不登校の関係性

*2 クリニック テルミナ|子供を不登校にする起立性調節障害(OD)
参考箇所:起立性調節障害の兆候について

*3 有明こどもクリニック|起立性調節障害(OD)
参考箇所:有明こどもクリニック|起立性調節障害(OD)

【監修者コメント】

不登校の背景にはそれなりの理由があるだろうと考えるのは自然な発想であると思います。友達関係の悩みや、学業の理由、いじめなどは連想しやすいものかと思います。

しかし、お子さん自身でも「なんでいけないのかわからない」と言語化が難しいこともありますし、ぱっと見ではわかりにくい病気などが潜んでいる可能性もあります。そういう場合に「学校に行きたくないわけじゃないのに行けない」という不登校もあるわけです。

起立性調節障害はそのうちの一つとも言えるものかと思います。

起立性調節障害の多くが思春期の頃に発症します。朝起きられないことが多く見られますが、それ以外にもめまい、立ちくらみ、頭痛、食欲不信、下痢、便秘、腹痛、冷え、生理痛、倦怠感などの症状が見られることがあります。

朝礼などでめまいを起こすような子もいれば、朝いくら叩いても全く起きないような状況まで様々です。

日内言動もあるので、午前中は調子が悪そうにしていても、午後から夕方にかけて元気になっていることもあります。そのため、怠けているだけだとか、嘘をついているというように見られてしまい、心ない言葉で傷ついてしまうことも少なくありません。

もし、似たような症状が考えられる場合には、一度かかりつけの小児科や起立性調節障害を診察してくれる医療機関などを受診してみることを検討してみてください。また、お子さん自身が自分で検索して起立性調節障害に辿り着くこともあります。その際には「そんなわけないでしょ」と言わずに、お子さんの話に耳を傾けてあげてみてください。

参考文献

うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある 親子で治す起立性調節障害

図とイラストでよくわかる 子どもの起立性調節障害: 最新の診断・治療から日常生活のサポートまで

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