思春期は不登校になる可能性が高い?その理由や対応について解説

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これまで、学校での出来事を何でも話してくれて、明るく素直だったお子さんが、思春期に入ってからは親に反抗したり、話しかけても無視をしたり、挙句の果てには投稿を渋ったり、部屋にこもったり…。

そんなお子さんの様子に戸惑っていらっしゃる保護者の方は少なくありません。
思春期のお子さんが、何かに悩んでいる様子なのに家族に対して心を閉ざしてしまっている場合、保護者の下端どう対応していけばよいのでしょうか?

本記事では、思春期と不登校の関係性や思春期のお子さんの心について、また思春期の親子の関わり方についてお伝えします。

思春期に不登校が増えるのは本当?

文部科学省の調査では、中学校で不登校になる生徒数は、1000人当たりの不登校生徒数で比べると小学生の3倍以上になることがわかりました。
不登校の原因として、いじめなどによるものがよく問題になっていますが、実は「思春期」という時間が大きく関係していると言われています。

(*出典1)「令和3年度(2021年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

そもそも思春期とは?

医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義されており、小学校高学年から高校生くらいまでの、心と身体が著しく発達する時期を思春期と言います。
思春期は、自動期から成人期へと移行する中間の期間で、身体が大きく変化することに伴い、精神的な不安を感じやすくなる時期でもあります。

お子さんの自我が確立されてくる時期であるため、「親から離れたい」と思う一方で、親から離れることに不安も感じます。
その不安を、友人と過ごすことで払拭しようとするため、友人との関わりが密になり、友人からの影響を受けやすくなるのが特徴です。
また、自我を確立する過程において、反抗的な態度をとることもあります。

中学から不登校が増える傾向がある

文部科学省の調査(*出典1)によると、2021年度の不登校児童生徒数は29万5925人と30万人に迫っており、小学校では100人に1人以上、中学校では20人に1人の不登校生徒がいることになる数字となっています。

これは、中学生になると、男女共に思春期に入り、精神的に不安定な時期になるうえ、学業不振や人間関係のトラブルが増えてくることが原因と考えられるでしょう。

中学で不登校が増加する理由とは?

中学校の不登校生徒数が増加する原因として、お子さんが思春期に入り、精神的に不安定になることを紹介しましたが、もう一つ、大きな原因と考えられるのは、小学校と中学校の環境の違いです。
小学校から中学校に進学することで、お子さんの生活環境は大きく変わります。その変化に戸惑い、ついていけなくなることも、不登校が増える要因になります。
全てではありませんが、環境が変わる一例をご説明します。

①勉強の難易度が上がる

小学校では成績の良かったお子さんが、中学校に入って伸び悩んでいしまうことは珍しくありません。
小学校と中学校では、授業やテストの内容が大きく変わるからです。
小学校での授業は、覚える量が少なく、難易度はそれほど高くありません。テストも単元が終わるたびにあるため、お子さんは特にテスト体s買うをしなくても、授業内容を覚えているうちにテストを受けられます。

しかし中学校では、授業の難易度が上がるだけではなく、覚えなければならないことが大幅に増えます。
そのうえ、テストは中間テストと期末テストの2回になることが一般的で、テストのための復習をしなければ授業で習ったことを忘れてしまっていることが多くあります。
小学校のテストと同じように、勉強せずにテストを受けると思うように点が取れず、その結果に落ち込み、お子さんの自己肯定感が失われてしまうことがあります。

②宿題や課題が増える

勉強の難易度が上がることともつながりますが、中学校では学習内容が高度になるため、理解を促進するための宿題や課題も増えます。
保護者の方が家で学習をフォローしやすい小学校のうちは、保護者の方の声掛けで宿題に取り掛かり、難易度の高い課題が出ても親子で取り組むことができるなど、宿題や課題にしっかり対応できることが多いです。
しかし、中学生になると、思春期により親子関係も変化するため、保護者の方が宿題をフォローできないご家庭も多くなります。そのような状況で1人で取り組んでいても、宿題の内容や量についていけなくなり、疲れてしまうお子さんがいます。

③生徒数が増え人間関係が広がる

学校によって規模は異なりますが、小学校より中学校の生徒数が増えることがほとんどです。
同学年の生徒数が増える中学校では、交友関係が広がるため、気の合う友達がたくさん見つかり、楽しいことが増える一方、人間関係のトラブルが発生する可能性も増えます。
思春期に入ったお子さん同士、些細なトラブルが拗れてしまうことも少なくなく、人間関係に悩んで不登校になるお子さんもいます。

④部活など上下関係が増える

生徒数が増え人間関係が広がることと似ていますが、中学校では人間関係に「先輩・後輩」の上下関係が出てきます。これは小学校ではなかった関係性であるため、戸惑ってしますお子さんもいます。
学校や部活動によって、上下関係の厳しさは異なるため、想定していなかった環境に身を置くことになるお子さんもいます。部活の上下関係にうまく馴染めないという理由で不登校になるお子さんは少なくありません。

⑤関わる先生の数が増える

中学校では、教科ごとに先生が変わります。どの教科も同じクラス担任の先生が授業をしていた小学校とは大きく異なる点で、お子さんが学校で関わる先生も格段に増えます。

お子さんの感性が多様化する思春期なので、先生に対する「好き嫌い」が出てくるのも自然なことです。
また、中学校では小学校に比べて厳しい先生が増えることもあり、厳しい先生の指導に気持ちが折れてしまうケースもあります。
同級生や部活の先輩後輩との人間関係だけでなく、先生との人間関係をきっかけに不登校になるお子さんもいます。

⑥ネット上の人間関係が増える

モバイル社会研究所が2022年11月に実施した調査(*出典2)によると、お子さんのスマホ所有開始年齢は12歳という結果が出ています。
中学校に入るまでにスマホを準備するお子さんが多いことが伺えます。

小学生が多く持つキッズケータイとは異なり、スマホではより自由にSNSを使ったオンラインコミュニケーションができるようになります。
さまざまなかたちでオンラインコミュニケーションを楽しむお子さんが増えますが、まだコミュニケーションスキルが不十分な中学生にとって、SNS上のいじめなど、ネットが関係するトラブルに巻き込まれることも少なくありません。

ネット上のトラブルから学校の人間関係に悩み、登校する気力も失ってしまうお子さんがいます。

⑦身体の変化によるコンプレックス

思春期とは、心と身体が大きく成長する時期です。
特に、女の子は思春期を迎えると、身体が丸みを帯びて脂肪がつきやすくなります。「太りたくない」と思っているお子さんにとっては、自然な身体の成長が悩みの種になることも。

⑧将来への不安

多感な思春期を迎えたお子さんは、不安を感じやすい状態です。
さらに今、世界は急速に変化し続けており、その変化の先にある未来が自分でどのように生きているのか、想像するのが難しくなったいます。

将来の夢が見つからずに悩み、不安になっているお子さんがいるかと思えば、将来の夢があるからこそ、その実現可能性に悩み、不安になっているお子さんもいます。
漠然とした将来への不安を感じているお子さんはとても多く、そのような不安から気力や活力を失い、学校へ行けなくなってしますお子さんがいます。

思春期のお子さんと親はどう関わればいい?

思春期のお子さんは多感で繊細で傷つきやすく、保護者の方から見れば些細なことで悩んでいることも少なくないでしょう。
心配して声を掛けても、反抗されたり無視をされたりで、親子関係がギクシャクしてしまうこともあります。
では、思春期のお子さんに親はどのように関わっていけばよいのでしょうか?

お子さんとの会話を意識する

まず大切にして頂きたいのは、お子さんへの声掛け、会話を絶やさないことです。
親離れしていく準備期間でもある思春期は、話しかけてもお子さんに反抗され、無視されることがありますが、決して怒りに任せて怒ったり、お子さんを否定したりしないでください。
無視されても、それで諦めてコミュニケーションを減らさないでいただきたいと思います。お子さんをよく観察し、お子さん自身を尊重する声掛けを続けていれば、お子さんは「大切にされている」という実感を持ち続けられますし、本当につらいことがあったときには保護者の方に打ち明けやすくなります。

お子さんの意志を尊重する

お子さんにとって、自分の意志を尊重してもらえることは、自己肯定を育み、多感で繊細な思春期においても「自分は大丈夫」と思える強靭な心の土台になります。

勉強してほしいのに勉強せずにだらだらしている、部屋を片付けてほしいのに一向に片づけないで散らかり放題…。
保護者の方がそんなお子さんの様子を見てイライラし、声を荒げて叱ってしまいたくなる気持ちはわかります。
しかし、その行動はお子さんの保護者に対する反発心を高めるだけです。
お子さんを、命令するように頭ごなしに従わせるのではなく、「いつならできる?」「どうすればできるかな?」「何か手伝ってほしいことはある?」と意見を聞いてみてあげてください。

得意や好きが伸びるように応援する

反抗的な態度をとるようになったお子さんに対して保護者の方がとるべき対応は、常にお子さんを「応援する姿勢」です。
保護者の方から見ると、勉強せずに遊んでばかりいるように見えてとしても、お子さんにとっては趣味に打ち込んでいる時間が何より大切なのかもしれません。
極端ですが、世の中にはゲームが好きでゲームの実況を配信することを生業としている方もいます
お子さんにとって何が必要なことなのか。
それは保護者の方が決めることではなく、お子さん自身が自分で考え、選択していくことです。
その選択を応援し、お子さんの好きや得意を応援することが、良好親子関係の構築につながり、お子さんの自己肯定感の醸成にもつながります。

思春期のお子さんが「学校に行きたくない」と言ったら?

不登校は「心が疲れてしまった状態」です。
そんな状態で無理に学校に登校させても、お子さんの心はさらに疲弊することになるでしょう。
再登校を焦るのではなく、まずはお子さんを心身ともに休ませてあげてください。

そして、会話の時間を大切にしてみてください。
お子さん自身、学校に行きたくない理由がはっきりわからない場合があったり、理由がわかっていても保護者の方には言いたくないことがあります。
無理に原因を聞き出すことに躍起にならず、お子さん自身の気持ちや意見を尊重し、寄り添い、「何があっても私はあなたの味方だ」ということを伝え続けてほしいと思います。

【まとめ】

ご紹介してきたように、「学校に行きたくない」と言い出す中学生はとても多く、その理由はお子さん個々によってさまざまです。
お子さんが思春期になると、小学校から中学校への環境の変化もあり、さまざまな悩みから不登校につながることも増えます。

もし、思春期に入ったお子さんが「学校に行きたくない」と言い始めたら、まずはその気持ちを受け止めてあげてください。
無理に登校することを押し付けたり、学校に行かないことを責めたりせず、お子さんの気持ちに寄り添い、会話する時間を大切にしてみてくださいね。

【出典一覧】

*出典1 文部科学省|令和3年度(2021年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
参考箇所:4. 小・中学校の長期欠席(不登校等)の状況
     5. 高等学校の長期欠席(不登校等)の状況

*出典2 モバイル社会研究所|2021年親と子の調査
参考箇所:調査結果

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