【取材記事】不登校はお母さんの責任ではない。-幸せな親子関係をつくる子育て専門家・大西りつ子さん

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監修:ツナグバ運営局

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ツナグバは、教育コーチング資格保有者や不登校経験者などが集まって運営しています。臨床心理士やスクールカウンセラーの監修のもと、不登校に関するお悩みに関する情報や、フリースクール・通信制高校に関する情報を中心に、信頼性の高い情報を取り扱っています。ツナグバの「Q&A機能」では、同じ悩みを抱える方や、専門家と投稿のやり取りができます。私たちの提供するサービスが、様々なお子さんやその保護者を繋ぐ場となり、大きな力になることを期待しています。

目次

看護師、養護教諭、クリニックでの指導員でのご活動を経て、2019年から、発達障害やグレーゾーンの子に悩む親への講座やセッションを開始された、大西りつ子さん。     

多くの講演会での登壇実績や、その利益をNPO法人へ全額寄付するなど、不登校に限らず子育て全般の支援活動や、お母さんの自立のサポートを勢力的に行っておられます。

今回ツナグバでは、大西さんのご活動やお母さんの自立についてのヒントについてお伺いをしました。

大西りつ子さんのご経歴・ご活動の背景

ーこの度はお時間を頂きありがとうございます。まず大西様のご経歴や現在のご活動に至った経緯を教えていただけますでしょうか。

「元々は看護師というキャリアがあり、訪問看護なども行っておりました。

その後、養護教諭の経験や市からの委託事業である学校保健支援員の活動、クリニックでのお母さんへの支援などを経て、現在はオンラインでのお母さんとのセッションをメインに活動しています。

不登校のお子さんを抱えるお母さんの悩みが深いことを現場にいたときに感じていました。何とかならないかなという想いがあり、そういう意味でもクリニックであればお母さんに近いと思っていましたが、クリニックでは、来院されたときの限定的な関わりでしか支援をできませんでした。

私はお母さんが楽になれば、それが一番子供にとっていいことだと思っています。お母さんが楽になるためであれば、エビデンスの有無に関わらずできることを全て取り入れて関わりたいと思っていたので、これまでの看護師や養護教諭などの経験や想いから、今の形でのお母さんへの支援というものに辿り着きました。」

不登校の悩みはお母さんが自分で乗り越えられる

ー大西さんが現在行われている不登校支援のご活動内容について、改めて教えて下さい。

「オンラインで全4回、お母さんとのセッションを行います。特徴は、4回のセッションの中で、不登校に限らず、子育て全般に関わる悩みを解決できることです。」

ーそれはすごいですね。何故そのようなことが可能なのでしょうか?

「3つポイントがあります。「とことん介入すること」「先入観を取り払うこと」「お母さんが自分自身に集中すること」です。」

とことん介入する

「以前働いていたクリニックで感じていた課題として、お母さんが自分事になりにくいなと思っていました。悩みを抱えるお母さんは「先生の所へ相談に来たから何とかなる」というふうに思ってしまうことが多いんです。

相談の場で話をしたとしても、帰ったら元の辛い状態に戻ってしまいます。例えばペアレントトレーニングを教わっても、その場1回で内容を理解して実践することは、まず無理だと思うんです。その場ではわかったように思えても、家で取り入れるってなかなか難しい。

返って子供から暴言などがあったときに、クリニックで聞いたことを使えるかと言ったら、恐らくもう感情の方が先にきてしまって、イライラしたり、どうしようってなったりで、もう使えないと思うんですよね。そして、次の月に来られたときもやっぱり同じということが続いていたので、家での時間に介入できないと難しいのではないかと感じていました。

クリニックは医療保険も使えるし、通いやすくて、もちろん大切な場所だと思います。ただ、だからこそ、お母さんの「ここに来たら安心」のような自分ごとにならないことや、金銭的にも通いやすいが故に、ただ通っているだけの状態になってしまい、自分で解決しようという力を奪ってしまっているような、そんな気がしていました。

ですので私は相談に来てくださったお母さんにとことん介入します。ただ「あなたがいないと無理なんです」という状態は作りません。4回のセッションでとことん介入しながら、お母さんは悩むことよりも、自分がこれからどうしたいか、などといった「自分のこと」に関心をもてるような関わりをします。
セッションを通じて元の状態に戻るというよりは、螺旋階段を上がって自分自身が良くなれるように、オンラインではありますがとことん介入しますので、セッションの2回目くらいからは「あれ、何に悩んでいたんだっけ」となることもしばしばあります。

というのも、本来不登校に関する悩みなどは、お母さんが自分で解決できることだと私は思っています。やり取りをさせてもらっていて、お母さん自身の気持ちの持ち方や、ものの見方、捉え方の角度を少し変えることで、実際に解決できていますからね。それをするためには、やはりとことんお母さんやご家庭のことに介入する必要があると感じますね。」

先入観を取り払うこと

「まず大前提として私は不登校や子育てがうまくいかないお母さんに対して、お母さんが悪いとか、お母さんが変わらなければいけないとかいう想いは全くありません。お母さんたちは元々、自分自身で乗り越えられる力を持っているんです。ただ、良いお母さんでなければいけないという世間の目であったり、こんなことしていたらダメなのではないかという一般常識への恐れであったりが邪魔して、本当に求めていることができていない状態にあることが多いんです。

ですので、まず「そういうものを恐れなくていいですよね」「本当はただ子供といい関係で幸せな時間を過ごしたいだけですよね」ということを伝え続けます。そうすると、一つずつ邪魔していたものが取り払われて、お母さん自身が本当に求めていたことや、したかったことにフォーカスされるようになってくるんです。

例えばよくある相談で「子供がゲームばかりしていて、全然勉強しません。どうしたらいいですか」と言ってこられます。勉強をさせるためにはどうしたらいいですか?という相談なのですが、私はまず「ゲームをして何が問題ですか?」と聞き返すんです。もちろん最初は「え、だって…」と仰られます。笑

お母さんはもう既に、ゲームばっかりするのは問題だという情報を見ています。だから何とかしなきゃいけないとなるんです。でも「子供とお母さんと幸せに過ごしていく」というお2人の関係だけを考えたときに、私は「子供と一緒に子供が何に興味を持ってるかを一緒に見に行っても面白いですよ」って言うんです。

 一緒にゲームやってみたら?とか、子供が例えばYouTubeを見ているんだったら、そのYouTubeの何に興味を持っているのかを、少し見てみてもいいんじゃない?ということを言います。そうした時に例えば、あるお子さんはyoutubeでゲームの実況中継ばっかり見てると言われます。じゃあ実況中継って何だろうと見てみると、かなりのスキルだと思うんですよ。ゲームをするだけでも大変なのに、視聴者に面白さを伝えたり、状況を分かりやすく伝えたり、見やすく編集したり。だから私はお母さんに、その実況中継のどういうところが面白くて見ているの?ということを子供に聞いてみてって言うんですよね。

そうするとお子さんはドヤ顔でyoutubeの面白さや知識を語ってくれるんですよ。そこで初めて、この子ってそういうことに興味があるんだ、そんな考え方を持っていたんだ、というような違う角度から子どもの行動を見られるようになるんです。その視点が「何とかしてゲームをやめさせなければいけない」「youtubeばかり見ているのを何とかしないといけない」と頑張りすぎていたものが解消されるきっかけになります。

子どもって、自分が興味を持って大切にしてることを「へえ」って聞いてもらえたら、やっぱり嬉しいじゃないですか。大人になった私も、今この話を聞いてもらえてとても嬉しいので、子どもたちの気持ちがわかります。目がキラキラすると思うんです。

子どもは嬉しいし、お母さんも「何かを教えなきゃいけない」というスタンスがなくなっているから、ただ親と子の対等で楽しいコミュニケーションがあるだけなんです。そういうものが続くと「あれ、何か問題だったっけ」という状態に早い段階で到達できる。そういうお母さんも多いですよ。」

今を生きる

「先程あげた3つのポイントとは少し話がずれますが、どうしても世間の情報の影響を、親も子も受けるものです。例えば家では楽しく過ごしているけど、学校では勉強がちょっと…というお子さんもいる中で「勉強ができないと将来が…」と過剰に心配しすぎるケース。ネットやSNSでそういった情報があまりにも目に入ってきて、今よりも将来のことに支配されていると感じることも多くあります。

私は「今にフォーカスしてください」とよくお伝えしています。未来なんて誰にもわかんないし、もしかしたら先程の話のゲームの実況中継をやってみたら、エンターテイメントとして社会に貢献できるような形で発揮される場合もあるじゃないですか。未来は全然わからないんですよ。子どもが自分の得意なことや可能性に気づいたら、それを伝えたくなって、今はyoutubeで発信できるんです。それで仕事が舞い込むかもしれないし、それによって社会の役に立つ何かを開発するかもしれないんです。

そう考えると、将来の不安にフォーカスし、意識を向けてることのもったいなさを感じます。今のお子さんの得意や可能性にフォーカスするだけで、いくらでもやり方・方法なんていっぱいあるし、その方が自分が気持ちよく子育てできませんか?ずっと不安って思っていたら、子供にはもう注意しかできなくなってしまうし、それで親子関係が幸せかと言ったら絶対そうじゃないですよね。セッションを通して、そういう思い込んでしまっている部分をひっくり返しています。

お子さんはそのまんま楽しく過ごしているだけで、自分の興味を育てているんです。興味のあることに出会って、そのことについてもっと知りたいとなったら自分で探求して、考えて、できるようになっていく、その力を勝手に育んでいるんです。

 それが結局、将来自分の中で「こういうことやりたいな」となった瞬間に、行動を起こせるためのソリューションになる。だからそんな心配しなくてもいいじゃないんかな。

ただ、子どものその力を育むためには、親自信が自分の可能性や、自分の力の方にフォーカスしていないといけません。」

お母さんが自分自身に集中すること

「不登校のご家庭では、お母さんが自分のやってきた子育てを責める場合が多いです。学校に行ってないとなると「私があのときもっと関わってなかったから」とか「ゲームを与えてしまったから」とか、親ってどうしても自分を責めるんです。自分がこんなふうに育ててしまったからって、やっぱり思ってしまう。私は「そこはもう全然関係ない!」ということをまずお伝えしたいし、セッションではお伝えしています。

例えばyoutubeの実況中継の話を子どもとするときに、子供は親の感情の動きをものすごく敏感にキャッチするので、お母さんが心からそれを楽しんでるというのがわかったら、どんどん話してくれて、得意を発揮できるんですが、お母さん自身が「こうした方がいいから」「こうやった方が子どものためにいい」という打算でやってることは見抜いています。そうすると子どもはもう楽しめなくなるんですね。「なんかお母さん、本当はこうしてほしいんだろうなぁ。でも自分に気を遣ってくれてるんだろうなぁ。」ということを、子どもは敏感に感じ取っています。」

可能性を信じて、肯定してあげるだけで、子どもは育つ

「干渉しなくても子どもは勝手に育っていくんだというスタンスをセッションではアドバイスしています。アドバイスというよりは、体感していただいてる感じでしょうか。まず、お母さん自身が自分で考えて決める体験をしてないですから。

学校で先生がこう言うから、親がこう言うから、というように私たちは育ってきていますから、自分がまずできない。その経験を親が持っていたら楽に子育てできると思っています。自分自身にその経験がなかったら、子どもがその力をもっていることを信じられないんですよ。なので私はお母さんに、最初に「自分はどうしたいんですか」ということを聞くんですよね。

セッションではできるだけ自分で決めるということを体験してもらいます。なのですごく言われるのは「りつ子さんが私を私以上に信頼してくれたから、私は子供を信頼することの意味がわかりました」ということをすごく言われます。

できるんだという成功体験のもとに子どもを見れることは、すごく大きなことです。今までは不安の目線でしか見れないから「いや無理だろう」「この子大丈夫かな」という風にしか見えなかったんだけど、自分が成功体験を持っていたら「大丈夫だ」と見れるようになるんですよね。」

子育てを頑張るお母さんたちへ伝えたいこと

ーありがとうございます。大変勉強になります。改めて、今、子育てに悩んだり、苦しんだりしている母親の皆様へお伝えしたいことを教えて頂けますか。

「伝えたいこと…ありすぎて難しいですね。笑
でも”自分にかまけてほしい”ということは、いつもかなり言っています。不登校に苦しんでいるお母さんが自分の好きなことやっていいよって言われても、なかなか出来ないんですよ。お子さんが不登校になってしまったという罪悪感の中で、自分が今までやれていなかった部分を埋めるように「何か子どものためにしなければいけない」となって、子どものことを見すぎてしまう。見ていることで、ある意味、ちゃんとやってるんですよ感を持ってしまう。

そういったお母さんには「見すぎ罪ですよ!」とよくお伝えしています。笑
お子さんのことばかり見すぎて、自爆してしまうんです。

親はこうするべきだ、子供をちゃんと見るのがお母さんの役割だ、という世間の共通認識がずっと昭和からありました。ただ、時代が変わって、共働きが当たり前になって、世間の求める「あるべき子育て」ができなくなって、でもお母さんたちは先入観から潜在的にそこを求めているんです。

だからお母さんは、自分のやりたいことやろうと思ったら、自分の中で一線を超える感覚がものすごくあって、私のセッションではそのお母さん自身の中の一線を一緒に越えていく感じで「でも大丈夫だったよね!」という確認をしていくイメージです。

お子さんにそうするように、まずは自分に興味を持ってあげてください。
親子というのは、ただ単純に、無邪気に、血のつながった対等な人間が2人いるだけなんです。その2人の間には、何かをさせるとか、何かをしてあげるというのはないんです。だから、自分に興味を持って、自分自身の人生を生ききってください。」

さいごに

大西さん、この度は貴重なお話を聞かせていただき誠にありがとうございました。

セッションや保護者との関わりは、大西さんが同じ「お母さん」という立場で、苦労や辛さを知っているからこそ出来る、大変素晴らしいものだと感じます。

取材時には、大西さんがクライアントとプライベートでも交流を持たれていることや、セッション通じて知り合った方々と多くの取り組みをされているお話も聞かせて頂きました。

ここまでクライアントに深く入り込める支援者である大西さんへの敬意と感謝と共に、今後このような支援の輪がさらに広がることを願うばかりです。

リンク

大西りつ子さん|HP
https://coco-oyacocoro.com/
instagram
https://www.instagram.com/ritsuko_onishi/
note
https://note.com/ri2ko/

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