不登校の中学生が通える学校・居場所とは?居場所が提供すべき4つの安心感について解説

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ある日、お子さんが「学校に行きたくない」と言い出したら。

驚き、戸惑い、ショックを受け、落ち込む。そんな保護者の方が多いのではないでしょうか。

最初はお子さんをなだめて登校させたとしても、問題の根本が解決しない限り、遅刻欠席は徐々に増え、本格的な不登校になっていくでしょう。

もう何週間も学校へ行けていないと気づいたときには、お子さんも保護者の方もどうすればよいのかわからず、諦めの気持ちが出てきていることも。

こういった状況になる背景として、不登校の中学生が最新の調査(*出典1)で19万人を超え、10年前の2倍に増えているにも関わらず、不登校への適切な対応についてはまだ広く知られていないということがあります。

本記事では、不登校のお子さんが学校の代わりに通える場所にはどのような種類があるのか、また、不登校中のお子さんにとって、どのような「居場所」が必要なのかについてお伝えします。

不登校の中学生の居場所は?

今、お子さんが不登校になったとしても、選択肢は「中学校に行く」「中学校に行かない」の2択ではありません。学校の代わりにお子さんの学習・生活を支えるさまざまな居場所・選択肢があります。

①学びの多様化学校(旧 不登校特例校)

学びの多様化学校とは、これまで「不登校特例校」と呼ばれていた学校です。2023年8月、不登校特例校の新たな名称として「学びの多様化学校」が公表されました。

令和5年時点で公立・私立含めて全国に24校あります。

文部科学省が正式に認可している一条校にあたりますが、学習指導要領にとらわれず、不登校の児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成・実施しているのが特徴です。

不登校生が通いやすいよう、始業時間を遅くしたり、授業時間を短かくするなど、独自に工夫している学校が多くあります。

教育支援センターやフリースクールのように、元の学校に籍を置いておく必要がなく、学びの多様化学校に通うことで卒業資格がもらえます。

学びの多様化学校について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

②フリースクール

フリースクールはNPOや企業などが運営する民間の教育機関で、主に不登校や引きこもりのお子さんに学習やコミュニケーションの機会を提供し、”第二の居場所”として支援をおこなっています。

全国に400~500施設あるため、不登校生の受け入れ先として認知度は高いです。ただ、規模や理念、活動内容はそれぞれの施設で大きく異なるため、お子さんに合うかどうか、事前にしっかり確認する必要があります。

将来的な復学や進学に備えて、フリースクールの利用が在籍校への出席として認められる「出席扱い」制度が使えるかどうかを基準に選ぶ方も多くいます。

フリースクールについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

③教育支援センター(旧 適藤指導教室)

教育支援センターは、主に小・中学校を長期間休んでいるお子さんを対象にした、学校に通わなくても学習を進めたり、集団生活を学んだりできる公的機関です。

運営は教育委員会が行っているため学校との連携が密であるのが特徴で、通所が学校の「出席扱い」になるケースも多いです。

学校への復帰を目的として設置されており、あくまで一時的な支援施設であるため、中学校の代わりにずっと通うという性質のものではありません。

教育支援センターについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

④自宅

文部科学省は2019年10月、「不登校児童生徒への支援の在り方」(*出典2)で、不登校の児童生徒が自宅で要件を満たして学習を進めることで「出席扱い」に認定される制度を発表しています。

自宅で、出席扱い制度に認定されているICT教材やオンラインフリースクールを活用して学習を進めることで、「出席扱い」に認定される児童生徒は年々増加しています。

ただ、この制度を利用したことのない学校もあるため、制度を活用したい場合は、要件や手順を確認し、学校と十分に連携を図ることが重要です。

⑤保健室

先に紹介した4つとは性質が異なりますが、不登校生の中には、学校の保健室に通っているお子さんもいます。

「保健室登校」や「別室登校」と呼ばれており、「学校に行くことはできるけど、自分の教室には行けない」というお子さんには、選択肢の1つになります。

保健室登校とは、「常時保健室」または「特定の授業には出席するが、主に保健室で過ごしている状態」で、出席日数にカウントされるため、毎日保健室に登校しているお子さんであれば、正しくは「不登校」ではなくなります。

学校によって、望む形での保健室登校ができるかは異なるので、まずは学校に連絡し、登校の選択肢としてどのような形をとれるのか、お子さんの現状に寄り添った登校スタイルは何かを相談してみてましょう。

⑥その他の教育機関

①~⑤以外にも、ヨーロッパやアメリカの哲学的思想をベースに発展した「オルタナティブ教育」を取り入れているオルタナティブスクールや、東京都が開校する単位制のチャレンジスクール、全日制のエンカレッジスクールなど、不登校生が通いやすい特色のある学校は増えています。

また、学校ではなく、塾や習い事をお子さんの居場所と考えることもできます。お子さんの現状に合う教育機関にはどんなところがあるのか、情報収集が重要になってきます。

不登校のお子さんが居場所に求めることとは?

学校の代わりにお子さんの学習・生活を支える居場所や選択肢をご紹介しましたが、そもそも不登校のお子さんはどのような居場所を求めているのでしょうか?

ここでは、「学校にはいたくない」と感じているお子さんが「ここにはいたい」と思える場所について解説していきます。

①ここにいてもいいんだという安心感

不登校の要因はお子さんによってさまざまで、原因を特定することができない場合も多くありますが、共通するのは学校に対する大きな不安です。

成績が思うように上がらなくても、友達とのコミュニケーションがうまくいかなくても、「あなたはここにいていいんだよ」とお子さん自身が「自分は受け入れてもらえている」という実感を持つことができれば、不安は和らいでいきます。

お子さんに共感してくれる人がいたり、悩みを真剣に聞いてくれる人の存在が、「受け入れてもらえている」という実感につながります。

②心身ともに危機を感じない安心感

文部科学省の2022年度の調査では、小中高校などで認知したいじめの件数は過去最多の6万1948件で、前年度比10.8%増となっています。

いじめによって精神的または肉体的に傷つけられてしまうと、強い不安に苛まれ、お子さんにとって学校は安心とは対極の危機を感じる場所になってしまいます。

お子さん自身がいじめとは直接関係がなくても、攻撃的な雰囲気が教室内にまん延していることで精神的に疲れてしまう場合もあります。

先生やクラスメイトとのコミュニケーションが良好で、お子さんが傷つくことのない環境に身をおいているかどうかが、安心感に直結します。

③他人に気を遣う必要がない安心感

さまざまな子どもたちが集まり、一緒に生活をする学校は、学べることが多くあります。一方、周りの子どもや先生とのコミュニケーションに気を遣い、気疲れしてしまうお子さんもいます。

そんなお子さんにとっては、気を遣う必要のない人だけがいる少人数制の場所や自宅が安心する居場所になるでしょう。

④自分のペースで過ごすことができる安心感

集団生活を行う学校は、決められたスケジュールに沿って行動することが求められます。お子さんによっては、学校で決められた生活のペースが自分のペースと合わず、ストレスを感じてしまうケースもあります。

そういった場合には、お子さんが心地よいと思えるペースで生活できる、スケジュールの自由度が高い居場所を探してあげることが重要です。

【まとめ】不登校のお子さんには安心して過ごせる居場所を。

不登校の児童生徒の増加と共に、既存の学校には合わない子どもたちにも学びやすい環境が、少しずつ整ってきています。

保護者の方に認識していただきたいのは、お子さんにとって重要なのは学校に行くことではなく、安心できる「居場所」があるかどうかということです。

子どもにとって「安心感」は何よりも大切です。

お子さん自身が傷つくことなく、楽しい気持ちになれる場所、充実感を味わえる場所こそ「安心感」のある居場所になります。

学校に不安感を持っているお子さんには、社会に学校以外の居場所があることを教えてあげてください。「学校以外にも自分の居場所がある」と世界を狭めないようにすることが、どんなときもお子さんの救いになるはずです。

心地の良い「居場所」はそこにいる「人」によってつくられます。子どもを支えたいと心から思ってくれている方たちと、お子さんにとって最適な環境を整えていただきたいと思います。

【出典一覧】

*出典1 日本経済新聞「不登校29万人、いじめ68万件 文科省調査で過去最多」2023年10月3日
参考箇所:冒頭

*出典2 文部科学省|不登校児童生徒への支援の在り方
参考箇所:不登校の中学生の居場所は?

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