不登校ではないけれど、毎朝登校を渋ったり、寝坊で遅刻したりしてしまう・・。
そんなお子さんの様子に悩んでいる保護者の方もいるのではないでしょうか。
不登校の児童生徒数が急増していることがニュースで話題になっていますが、不登校の定義には当てはまらない、遅刻が続いていたり短期的に学校を休む、または保健室登校をしているといったお子さんも増えています。
本記事では、お子さんが学校に遅刻しがちになってしまう理由や、遅刻することによる懸念点、遅刻が続き学校に通えない場合の選択肢などをご紹介します。
学校の遅刻は悪いこと?
お子さんの遅刻が増えてくる原因として、個々にさまざまな理由がありますが、よくある理由として以下のことが考えられます。
・学校で嫌なこと(授業についていけない、人間関係のトラブルがある、等)があり、学校に行きたくない
・無気力で何事に対してもやる気が起きない
・夜更かしが続き朝に起きられない
・学校が遠方であるため、通うことが困難
そもそも、学校に遅刻することは「悪いこと」なのでしょうか?
多くの人にとって、「遅刻=良くないこと」という認識がありますが、どうして遅刻は良くないことだと思われているのでしょうか?
「遅刻=ダメ」ではない
学校に遅刻してはいけない理由を考えてみましょう。
・決められたルールを守れていない(学校は集団生活を学ぶ場でもあるので、決められたルールを守れないお子さんは非難される)
・先生やクラスメイトに迷惑をかける(授業の途中で教室に入ることで、他のお子さんの集中力が欠ける、他のお子さんが自分も遅刻してもいいと思うようになる、など)
・遅刻が多いとお子さん自信の信用を失う(先生やクラスメイトからルーズな性格だと思われてしまう)
こういった理由が考えられますが、他のお子さんに暴力をふるったり、悪口を言ったりすることと違い、誰かを傷つける行動ではないため、遅刻は絶対にやってはいけないことではありません。
実は、お子さんが実際に学校に遅刻をしてしまったとしても、小中学校の時点では、進学にあたってもそこまで大きな影響はありません。
そのため、学校に行きたくない理由がある場合や、無気力な状態になってしまっているお子さんに対しては、遅刻を強く咎めない方がよいでしょう。
完璧主義だと疲れてしまうことも
完璧主義の保護者の方で、「遅刻は絶対ダメ」と強く思っていると、お子さんもそう思ってしまう可能性があります。
もちろん、遅刻は推奨されることではなく、良くないことではあるのですが、理由がある場合には仕方のないこと、絶対にだめなことではないとお伝えするのがよいでしょう。
お子さんが「遅刻=ダメ」と強く思ってしまうと、「授業の途中から遅刻して行くことは絶対にしたくない。だから、遅刻をするくらいなら学校を休む」という選択をするようになることもあります。
また、遅刻が増えてくると、そのまま不登校になるお子さんも少なくありませんが、不登校になっても対応方法はあります。
文部科学省は2019年から、フリースクールなどでの教育確保を求めており、今年3月には「誰一人取り残されない学び」(*出典1)を掲げ、学校外にも多様な学びの場を整備していくことを通知しています。そういったこともあり、実際にフリースクールや家で学習を進めながら「出席扱い」とする「出席扱い制度」を利用して学校外で学ぶお子さんも増えています。
出席扱い制度について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
登校時間が決まっている理由
学校の登校時間が決まっている理由を考えてみましょう。
社会性を身に付ける
学校は勉強を学ぶ場ですが、将来、社会人になったときのために集団生活を学ぶ場でもあります。
人は、会社などさまざまな集団に属して生きていきます。そして、それぞれの集団で決められたルールに則って行動することが求められます。
学校では、将来それぞれの集団でスムーズにコミュニケーションをとって生きていけるよう、社会性を身に付ける訓練をしていると考えることができます。
朝、決められた時間に登校することは、決められた時間に出社することに通じますし、学校で決められたルールを守ることは会社の規則を守ることに通じます。
正しい生活習慣を身に付ける
正しい生活習慣は早起きがポイントになります。朝になったら起きることを習慣づけることで、夜になれば眠たくなり、夜更かしせずに眠れるようになりますし、朝に起きて夜に眠ることは自律神経を整えることにもつながり、健康的な生活につながっていきます。
そういった理由もあり、朝起きるべき時間にしっかり起きる習慣をつけるために、学校の登校時間が逆算して決められていると考えられます。
遅刻しても絶望する必要はない
学校の登校時間が決まっている理由をお伝えしましたが、登校時間に間に合わず、遅刻することになっても、絶望する必要はありません。
法律を破る罪を犯したわけではありませんし、誰かを傷つける行動ではないからです。
遅刻をしても、学校で社会性を身に付けることはできますし、正しい生活習慣も、すぐには身に付かなくても、徐々に身に付けていくことができるものです。
朝行かなくていい学校もある
体質的に、どうしても朝に起きることが辛くてできないというお子さんであれば、朝に登校しなくてもよい学校があるので、そういったところを探すのもひとつの選択肢です。
①学びの多様化学校(旧 不登校特例校)
学びの多様化学校は、令和5年時点で公立・私立含めて全国に24校あります。
文部科学省が正式に認可している一条校にあたりますが、学習指導要領にとらわれず、不登校の児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成・実施しているのが特徴です。
始業時間を遅くしたり、授業時間を短くするなど、独自に工夫している学校が多くあります。
学びの多様化学校について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
②教育支援センター(旧 適藤指導教室)
教育支援センターは、主に小・中学校を長期間休んでいるお子さんを対象にした、学校に通わなくても学習を進めたり、集団生活を学んだりできる公的機関です。
教育委員会が運営しているため学校との連携が密であるのが特徴で、通所が学校の「出席扱い」になるケースも多いです。
ただし、学校への復帰を目的とした一時的な支援施設であるため、学校の代わりにずっと通うという性質のものではありません。
教育支援センターについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
③その他の教育機関
その他、ヨーロッパやアメリカの哲学的思想をベースに発展したオルタナティブスクールや、東京都が開校する単位制のチャレンジスクール、全日制のエンカレッジスクールなど、特色のある学校は増えています。
お子さんの現状に合う学校として、どんなところがあるのか、情報収集をしてみてください。
出勤時間が自由な会社制度
2020年のコロナ禍以降、多くの会社が社員の出社制限を行ったり、通勤ラッシュを避けるための時差出勤制度を取り入れました。
その結果、自宅でも制限なく働ける環境が整い、出社時間も以前よりは自由に選択できる社会になってきました。
体質的に朝が苦手な方や、家からオフィスまでが遠く、通勤時間に多くの時間を割いていた方にとっては、とても働きやすい環境が整ってきました。
今、学校に遅刻してしまうお子さんも、将来、自分にとって働きやすい会社、働きやすい環境を選べる時代になってきています。
遅刻で留年する可能性はある?
小学校と中学校は義務教育なので、留年という概念はありません。
遅刻しても卒業できますし、不登校でも卒業できます。ただし、公立高校への進学を考えているのであれば、出席日数がある程度必要になってくるので、注意が必要です。
一方、高校は義務教育ではないため、進級条件を満たさなければ留年します。
進級の条件は単位を修得することで、単位修得の基準は「成績」と「出席日数」の2つです。
成績は、課題の提出やテストの点数で決まります。
出席日数は、年間の出席日数が3分の2未満だと単位が修得できない高校が多いです。
全日制高校の総授業日数は200日前後であることが多いので、1年間で60日以上欠席すると、留年の可能性が出てきます。
この欠席ですが、遅刻や早退も欠席としてカウントされることがあります。遅刻・早退を3回すると欠席1回とみなされるなど、ルールは学校によって異なるため、遅刻・早退が多い場合はお子さんの学校のルールを確認した方がよいでしょう。
朝だけ調子が悪い場合は起立性調節障害の可能性も
「朝起きるのが辛い」「頭痛腹痛が頻発する」といった症状がある場合は、「起立性調節障害」の可能性があります。
起立性調節障害は、自律神経のバランスが崩れやすい思春期に症状が出やすくなります。
代表的な症状は、朝起きられない、けん怠感、頭痛などで、中学生の約1割がこの病気だと言われており、不登校の原因になっていることも多くあります。
もし、起立性調節障害の可能性がある場合は、病院を受診してみてください。
日常生活では、暑気を避けたり、低血圧予防のための水分補給に気をつけたりすることで、症状を軽くできる場合があります。
起立性調節障害について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
遅刻がちで学校に通えない場合の選択肢
小中学生|フリースクール
小中学生が通える公的な学校として、学びの多様化学校や教育支援センターをご紹介しましたが、民間の教育機関として、フリースクールも選択肢として考えることができます。
フリースクールはNPOや企業などが運営する民間の教育機関で、主に不登校や引きこもりのお子さんに学習やコミュニケーションの機会を提供し、”第二の居場所”として支援をおこなっています。
全国に400~500施設あるため、不登校生の受け入れ先として認知度は高いです。ただ、規模や理念、活動内容はそれぞれの施設で大きく異なるため、お子さんに合うかどうか、事前に確認する必要があります。
将来的な復学や進学に備えて、フリースクールの利用が在籍校への出席として認められる「出席扱い」制度が使える施設も多く、制度が使えるかどうかを基準に選ぶ方も多くいます。
フリースクールについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
高校生|通信制高校や定時制高校
高校は、いわゆる一般的な「全日制高校」の他に、「定時制高校」「通信制高校」があります。
それぞれ、以下のような特徴があります。
全日制高校・・・主に平日の朝から夕方まで登校し、授業を受ける高校
定時制高校・・・「夜間定時制」「昼間二部定時制」「三部制」の3つのタイプの時間に合わせて登校し、授業を受ける高校
通信制高校・・・自宅で教科書や動画授業を中心に勉強する高校です。課題やレポートを通して学習を進める
定時制高校では、授業を行う時間帯が決まっているため、お子さんの通いやすい時間帯で学校に通うことができる点は大きなメリットになるでしょう。
ただし、定時制高校は1日の授業時間が少ない場合が多いため、卒業までに4年間かかることもある点に注意が必要です。3年間で卒業できるコースのある定時制高校もありますが、その場合、1日あたりの授業時間を5〜6時間に増やさなければなりません。
3年間で高校を卒業し、大学受験をしたいという場合は、卒業までの年数も調べながら学校を選ぶようにしましょう。
通信制高校では、教科書や参考書、動画授業を中心に勉強していきます。したがって、基本的には家から出ることなく学習を進めることができます。
どうしても遅刻してしまうお子さんにとって、登校しなくても学習を進めることができる通信制高校は、負担が少ないため、ストレスなく学習を進められるでしょう。
【まとめ】
お子さんが、学校に遅刻ばかりしていると、卒業や進学ができるのか、また、社会に出てからどうなるんだろうと不安になると思います。
今は、朝早くに行かなくてもよい学校もありますし、将来的な働き方も多様になっています。
お子さんが時間通りに登校することに大きな負担を感じているようであれば、「遅刻はダメ」と強く言うのではなく、お子さんと対話し、様子を見てさまざまな選択肢を提案してあげてくださいね。
【出典一覧】
*出典1 文部科学省|誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)
参考箇所:目指す姿