「学校に行けない日が続いている」「高校卒業だけは何とかさせたい」――そんな悩みを抱えるご家庭にとって、通信制高校は現実的な進路になります。山口県は全国から生徒が集まる広域通信制高校の本校が複数あり、選択肢の幅が広いのが特徴です。この記事では、県内で学べる通信制高校とサポート校を、特徴・学費・スクーリング・入試・所在地まで紹介します。目的別の選び方や使える支援制度もまとめました。
山口県の通信制高校事情
はじめに、山口県の通信制高校がどのような状況にあるのかを整理しておきましょう。
文部科学省の学校基本調査によると、令和7年度(2025年度)時点で山口県内に通信制課程を置く高校は8校です。内訳は公立1校・私立7校で、私立のうち3校は通信制だけを置く独立校、4校は全日制などと同じ学校のなかに通信制課程を併せ持つ併置校です。私立7校という数は全国的に見ても多い部類で、県内に本校を構える広域通信制高校が複数あることが山口県の大きな特徴になっています。
地理的には、県内各地に学校が分散しているのが山口県の特徴です。県央の山口市には公立の山口松風館高等学校と、全国に校舎を展開する精華学園高等学校の本校があります。東部では岩国市に松陰高等学校、北部では萩市に萩明倫館高等学校、南東部では光市に聖光高等学校、防府市に誠英高等学校が置かれ、さらに美祢市の成進高等学校、長門市の長門高等学校も通信制課程を持っています。加えて、公立の山口松風館高等学校は岩国市・周南市・下関市・萩市の県立高校4校を通信教育連携協力施設としており、山口市まで出なくても県内4地域でスクーリングを受けられる体制が整っています。
新しい動きとしては、萩市の萩明倫館高等学校が2025年(令和7年)4月に開校しました。全国に300校以上ある学習塾「松陰塾」を母体とする広域通信制高校で、県内の選択肢はさらに広がっています。ここからは、区分ごとに具体的な学校を見ていきましょう。
【公立】山口県の通信制高校
費用を抑えたいなら、まず候補になるのが公立の通信制です。山口県で通信制課程を置く公立高校は、山口市の山口松風館高等学校の1校ですが、県内4か所の連携協力施設を使える点で、実質的なカバー範囲は県全域に及びます。
山口県立山口松風館高等学校(山口市)

山口市にある県立の通信制高校で、設置学科は普通科、定員は1,600人です。
最大の特徴は、本校のほかに県内4か所の通信教育連携協力施設が設けられていることです。
具体的には、岩国市の県立岩国商業高等学校東分校(定員150人)、周南市の県立徳山高等学校(定員200人)、下関市の県立下関双葉高等学校(定員200人)、萩市の県立萩高等学校(定員100人)の4か所です。
各施設の面接指導は、山口松風館高等学校の教職員が主に担当します。県東部から西部まで、自宅に近い会場でスクーリングを受けられるのは通学の負担を抑えられる利点です。
学費の負担が軽いのも公立ならではです。
入学検定料は100円、授業料は1単位あたり100円で、これに育成会費・生徒会費・スポーツ振興センター共済掛金として2,552円と、受講科目に応じた教科書・学習書代が加わります。合計すると年間2〜3万円程度で学べる計算です。
入学の機会は春季と秋季の年2回あり、毎年多くの生徒が新入学・転入学し、卒業していきます。年度によって日程や費用は変わるため、最新の募集要項で確認してください。
所在地:山口市小郡令和三丁目6番18号(JR新山口駅在来線口から徒歩6分)
【私立】山口県に本校がある通信制高校
山口県には、全国から入学できる広域通信制高校の本校が複数あり、地元の生徒にとっては「本校に通える」という利点があります。ここでは特徴の異なる4校を紹介します。なお、このほかにも防府市の誠英高等学校、美祢市の成進高等学校、長門市の長門高等学校が通信制課程を置いており、地元から通える選択肢として検討する価値があります。
精華学園高等学校(山口市)

山口市小郡栄町に本校を置く、学校法人山口精華学園が運営する広域通信制・単位制の高校です。
公式サイトによれば、山口県に本拠を置く学校としては初めての広域通信制・単位制高校として平成21年7月に宇部市で開校し、平成25年4月に山口市へ本校舎を新設・移転しました。
本校のほかに全国約50か所の校舎を設置しており、それぞれの校舎で入学から卒業までを完結できる仕組みを採っているため、本校まで移動する負担がないのが際立った特徴です。
学科は普通科で、全国の校舎を合わせた生徒数は3,412人(1年次860人・2年次1,100人・3年次1,452人)。県内に本校を置く通信制のなかでは最大規模です。
学習の流れは、教科書や参考書で自学自習しながらレポートを作成して添削指導を受け、スクーリング(面接指導)で直接指導を受けたうえで、前期・後期の年2回の単位認定試験に臨むという形です。
スクーリングは通いたい日と時間を自分で計画できるため、体調や生活リズムに合わせて調整しやすくなっています。
声優・イラスト・デッサン・美大芸大・英語・情報・建設技能・進学個別といったコースが用意されているのも、専門的に学びたいお子さんには魅力でしょう。
県内には山口本校のほかに宇部新川駅近くの山口宇部校もあります。
学納金は希望する校舎とコースによって異なると公式に案内されているため、金額は必ず問い合わせて確認してください。
なお美大・芸大コースと英語コースには、基準を満たす場合に学費を免除する特待生制度があります。
所在地:(山口本校)山口市小郡栄町5番22号(新山口駅新幹線口から徒歩8分)
(山口宇部校)宇部市松島町17番25号(宇部新川駅より徒歩2分)
松陰高等学校(岩国市)

岩国市錦町宇佐郷に本校を置く広域通信制・単位制の高校です。
「問いを立てる人になろう」という教育理念を掲げ、与えられた問題に答えるだけでなく、自分から問いを立てる力を育てることを重視しています。
学習はタブレットを活用し、一人ひとりが自由にスタディプランを組み立てられる仕組みです。
専門コースの幅広さも際立っており、CGクリエーターコース、Voice Studyコース、スポーツコース、クリエイティブコースなどが用意されています。
さらに、インターナショナルスクールやメタバースクリエイター養成コースと同時に学べる「同時入学コース」も設けられており、高校卒業と専門的な学びを並行して進められます。
学費は入学金が不要で、授業料が1単位あたり12,000円(年間8単位以上)、これに施設設備費が年額36,000円、教育運営費が年額50,000円かかります。教育充実費は各学習センターによって異なるため個別の確認が必要です。
入学検定料は10,000円で、選考は書類選考と面接(新入学の場合は基礎学力テストも実施)。
転入学は随時、編入学と新入学は4月と10月が入学時期です。
就学支援金は一度納入したうえで年度末に精算する方式が案内されています(金額は公式サイトの生徒募集要項による。)
所在地:岩国市錦町宇佐郷507番地
萩明倫館高等学校(萩市)

2025年(令和7年)4月に萩市で開校した広域通信制高校です。
全国に300校以上を展開する学習塾「松陰塾」が母体で、長年の個別指導のノウハウを生かし、基礎学力を確実に身につけられる学習環境を整えているのが特徴です。
「わかる」「できた」という成功体験を積み重ねることを重視しており、勉強に苦手意識があるお子さんでも取り組みやすい設計になっています。
スクーリングは毎年秋に本校のある萩市で4〜5日程度行われ、萩城跡や松陰神社などの観光名所の散策、萩焼や和菓子づくりといった伝統文化の体験が組み込まれています。
校舎に通う必要があるのは年2回、このスクーリングと単位認定試験だけで、普段の学習で分からないことはオンライン専任の職員がメールや電話で対応します。
学費は令和8年度の新入生の場合、入学金20,000円、施設設備費30,000円、教育運営費120,000円(月額10,000円×12か月)、授業料375,000円(1単位15,000円×25単位)で、合計は年額545,000円です。
履修する単位数によって授業料は変動し、スクーリング指導費は含まれますが、スクーリング時の交通費・宿泊費・食費は別途必要になります。
授業料は就学支援金の対象です。至誠館大学との高大連携も結ばれており、進学を視野に入れた相談もできます。
所在地:萩市大字椿東 3193-2
聖光高等学校(光市)

光市光井にある学校法人櫨蔭学園の高校で、全日制課程と並んで通信制課程を置いています。
基本のスクーリングは毎週土曜日ですが、平日に登校して学習指導やレポート指導を受けられるのが大きな特徴です。
日課表や出席の方法は大学の授業に近い形をとっており、情報・福祉・家庭・商業といった科目も選択できます。
アルバイトや仕事を持つことを推奨しており、働きながら卒業を目指す生徒を後押しする姿勢が明確です。
本人の希望に応じて進学指導も行われ、新入生については条件により全日制への転籍も可能とされています。
単位認定試験を受けるにはレポートの全提出と規定回数以上のスクーリング出席が必要で、学期ごとに5時間以上の特別活動への参加が目標とされています。
在籍生徒は令和8年4月1日現在で180人、前年度の卒業者は63人でした。学費や出願の詳細は入学案内で確認してください。
所在地:光市光井9丁目22番1号
山口県にキャンパス・学習センターがある広域通信制高校
本校は県外にありながら、山口県内にキャンパスを構える広域通信制高校もあります。県内では、北海道に本校を置くクラーク記念国際高等学校が、教育連携校という形で2か所に拠点を設けています。教育連携校とは、クラークと連携を結んだ専修学校高等課程や技能連携施設のことで、連携校で専門的な学びや資格取得に取り組みながら、同校の課程を併修して高校卒業資格を取得できる仕組みです。
クラーク記念国際高等学校 連携校山口キャンパス(山口市)

山口市小郡高砂町にある、ネムハイスクール高等専修学校が運営する連携校キャンパスです。
新山口駅に近く、県央エリアから通いやすい立地にあります。
専修学校高等課程での学びとクラークの通信制課程を組み合わせることで、専門知識やスキルを身につけながら高校卒業資格を取得できるのが特徴です。
全日制と同じように毎日通うスタイルが基本になるため、生活リズムを立て直したいお子さんや、仲間と一緒に学校生活を送りたいお子さんに向いています。
費用は、連携校の学費とクラーク側の学費が別々にかかる点に注意してください。
クラーク側は、入学時に入学金10,000円と施設設備費20,000円が必要で、単位修得にかかる費用には就学支援金が充てられる仕組みです。
ただし毎日通うタイプの学費は拠点によって異なると公式に案内されているため、連携校分と合わせた総額は必ずキャンパスで確認してください。
所在地:山口市小郡高砂町3番4
クラーク記念国際高等学校 連携校周南キャンパス(周南市)

周南市にある連携校キャンパスで、こちらもネムハイスクールが運営しています。
県東部の周南エリアに住んでいて、山口市まで通うのが難しい場合の受け皿になります。
学びの仕組みは山口キャンパスと同じく、連携校での学習とクラークの通信制課程の併修という形です。
少人数の環境で、一人ひとりの状況に合わせた支援を受けながら高校卒業を目指せます。
通学のペースや在籍中のサポート体制はキャンパスによって運用が異なる場合があるため、実際に足を運んで確認しておくと安心です。
学費は山口キャンパスと同じく、連携校分とクラーク側の両方が必要です。
クラーク側の入学時費用(入学金10,000円・施設設備費20,000円)に加えて連携校の費用が拠点ごとに設定されているため、総額を早めに把握しておきましょう。
所在地:周南市桜馬場通り2-3
山口県のサポート校一覧
サポート校は、それ自体では高卒資格を出せない民間の教育施設です。高卒資格の取得には提携する通信制高校への同時入学が必要になり、サポート校の費用と通信制高校の学費は別々にかかる点に注意してください。山口県は県内に本校を置く通信制高校が多く、本校やその学習拠点がそのまま通学先になるケースが多いため、サポート校の数自体は多くありません。そのなかで、学習支援に特化した選択肢になるのが次の1校です。
トライ式高等学院 山口キャンパス(山口市)

「家庭教師のトライ」が運営するサポート校で、山口市小郡明治にキャンパスがあります。
提携する通信制高校に在籍しながら、トライならではのマンツーマン指導で学習を進められるのが最大の特徴です。
通学・在宅・オンラインの学習スタイルを組み合わせられるため、朝の体調に波がある場合でも、登校日や時間を調整しながら卒業を目指せます。
不登校からの再スタートに対応する体制と、大学進学を見据えた指導の両方を備えており、進学サポートの手厚さにも定評があります。
新山口駅にほど近く、県内各地から通いやすい立地です。
学費はコースや受講するコマ数によって決まる仕組みで、公式サイトには金額の掲載がなく、専用の問い合わせ窓口が用意されています。
見学や個別相談の際に、提携する通信制高校の学費と合わせた総額を確認しておくと安心です。
所在地:山口市小郡明治2丁目12番5号 TPUビル2F(JR山陽新幹線・JR山陽本線「新山口駅」在来線口より徒歩約10秒)
【目的別】山口県の通信制高校おすすめの選び方
候補が絞りきれないときは、何を優先するかで考えると決めやすくなります。目的別に向いている学校を整理しました。
とにかく学費を抑えたい方には、授業料が1単位100円、年間2〜3万円程度で学べる県立の山口松風館高等学校が筆頭候補です。県内4か所の連携協力施設を使えるため、遠方に住んでいても交通費を抑えやすいのも利点です。
大学進学を目指す方には、マンツーマンで受験対策までみてくれるトライ式高等学院、希望に応じて進学指導を行う聖光高等学校、至誠館大学との高大連携がある萩明倫館高等学校などが向いています。
不登校経験があり手厚いサポートがほしい方には、個別指導塾のノウハウで基礎から学び直せる萩明倫館高等学校、平日にも登校して指導を受けられる聖光高等学校、完全マンツーマンのトライ式高等学院が候補になります。
専門分野(芸術・eスポーツ・プログラミング等)を学びたい方には、CGクリエーターやVoice Studyなど専門コースが豊富な松陰高等学校が向いています。専修学校高等課程で資格取得に取り組めるクラーク記念国際高等学校の連携校キャンパスも選択肢です。
通学日数の少なさを重視する方には、年1回・秋の4〜5日程度のスクーリングで完結する萩明倫館高等学校、週1回の土曜スクーリングが基本の聖光高等学校、自宅学習を中心に組み立てられる精華学園高等学校が通いやすいでしょう。
発達障害・起立性調節障害の方には、体調に合わせて在宅・オンラインで学べるトライ式高等学院が候補になります。自分のペースでスタディプランを組める松陰高等学校、近くの連携協力施設でスクーリングを受けられる山口松風館高等学校も、無理なく続けやすい環境です。移動の負担が少ないことは、体調に波がある場合の大きな助けになります。
山口県の通信制高校で使える奨学金・補助金制度
通信制高校は全日制より学費を抑えられることが多いものの、私立やサポート校ではまとまった費用がかかります。使える制度を早めに押さえておきましょう。
全国共通で使える制度
高等学校等就学支援金は、授業料を国が支援する制度で、通信制高校も対象です。2026年(令和8年)4月からは所得制限が撤廃され、より多くの家庭が支援を受けられるようになります。支給される額は履修する単位数に応じて決まり、年度ごとに見直されるため、具体的な金額は文部科学省の案内や在籍する学校で確認してください。私立の通信制高校では、この就学支援金を適用すると授業料の負担が大きく変わるため、見積もりの際は必ず適用後の金額も確認しておきましょう。
進学や入学時のまとまった出費に備えるなら、日本政策金融公庫の「国の教育ローン(教育一般貸付)」も選択肢になります。通信制高校の学費にも使え、子ども1人につき上限350万円まで固定金利で借り入れが可能です。入学金や授業料、教材費などに幅広く充てられます。金利や世帯年収の上限は改定されることがあるため、最新の条件は公庫の公式サイトで確認してください。
山口県の制度
授業料以外の教育費を支える返済不要の給付金が高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)です。山口県では私立に通う場合を学事文書課が、国公立に通う場合を県教育委員会が担当しており、申請の窓口が分かれています。
給付額は在籍する学校が私立か国公立かで変わります(以下はいずれも令和8年度の額)。私立の通信制では、生活保護受給世帯が年額52,600円、住民税非課税世帯が52,100円、基準額が105,500円未満の世帯(非課税世帯を除く)は17,370円です。国公立の通信制では、生活保護受給世帯が32,300円、非課税世帯が50,500円と設定されています。全日制の非課税世帯が私立152,000円・国公立143,700円であるのに比べると通信制の額は低めですが、これは履修する単位数に応じて教材費などの負担が異なるためです。金額は年度ごとに改定されるため、申請前に最新の案内を確認してください。
なお、給付額や所得の基準は年度ごとに改定されます。申請前に必ず山口県の公式ページで最新の案内を確認してください。このほか、山口県教育委員会が実施する奨学金の貸付制度や、市町が独自に設けている奨学金もあります。お住まいの市町の窓口に「通信制高校でも対象になるか」を確認しておくと、使える制度を取りこぼさずに済みます。
学校選びは、学費だけでなく通学スタイルやサポート体制、学びたい分野など複数の視点から比べることが大切です。
山口県は県内各地に通信制高校の本校が分かれてあり、公立でも県内4か所でスクーリングを受けられる体制が整っています。
気になる学校が見つかったら、まずは資料請求やオープンスクールに足を運び、お子さんと一緒に雰囲気を確かめてみてください。

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