不登校は増えている?原因や教育現場の実態を解説

監修:村上実優

監修:村上実優

累計7万人以上の指導実績を持つ成基の個別指導塾「ゴールフリー」で教室長を務めた後、シンガクの教室長に就任。子どもの本来持つやる気や意欲を引き出す“教育コーチング”のスキルを活かし、学校以外の多様な学びの機会提供と、子どもが安心して過ごせる居場所づくりを目指してシンガクを運営している。

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目次

毎年ニュースになっているのでご存知の方も多いと思いますが、子どもの数が減り続けているにも関わらず、不登校の児童生徒数は毎年過去最多を更新しています。

2023年10月に文部科学省が発表した不登校の小中学生の人数は約30万人でした。過去5年間で不登校の児童生徒数は倍増しています。

なぜ、これだけ不登校のお子さんが増えているのでしょうか?

本記事では、不登校の現状やその背景にある主な要因、そして学校や行政の対応について詳しく解説します。

不登校問題の理解を深める一助となれば幸いです。

不登校は増え続けている?

文部科学省が公表した令和4年度の調査結果(*出典1)によると、不登校児童生徒数は29万9048人と、前年度から約5万4千人(22.1%)が増加し、過去最多となりました。

不登校の内訳は、小学生が10万5112人(前年度比29.0%増)、中学生が19万3936人(同18.7%増)となっており、10年前と比較すると小学生は3.6倍、中学生は2.1倍増となっています。

気を付けていただきたいのが、この数字は、文部科学省が不登校と定義する「登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」であるため、病気や経済的な理由などによって欠席しているお子さんを含める「長期欠席者」は、約46万人になります。

また、断続的に登校したり欠席したりという状態が続く「行き渋り」状態のお子さんも含めると、もっと多くのお子さんが学校に通えていないということがわかります。

なぜ不登校は増え続けるの?

不登校が増え続ける背景には、現代の社会や教育環境における複雑な要因が絡んでいます。不登校が増えている要因として考えられる主な理由を詳しく説明します。

1. 学校環境の変化

いじめやクラス内での孤立感など、人間関係のトラブルが不登校の大きな原因となっています。

デジタルデバイスやSNSの普及により、お子さんは放課後や休日など、学校の外でもオンラインでクラスメイトとつながっていることが少なくありません。以前より、人間関係のストレスが長時間続く傾向にあり、お子さんの心の負担が増している可能性があります。

2. 学業へのプレッシャー

近年、受験勉強の低年齢化が進むなど、競争が激化する中で、成績や進路に対するプレッシャーが増加しています。特に学力差が広がると、お子さんは自信を喪失し、学校に行くことが苦痛になることが多くあります。

3. 家庭環境の影響

家庭内の不和や経済的な困難、親の過剰な期待や干渉が、お子さんにとって心理的な負担となることがあります。

特に共働きの家庭が増えているため保護者は常に忙しく、お子さんと十分なコミュニケーションが取れない場合もあります。そういった場合は、お子さんの孤独感や不安が募りやすくなるため、不登校につながることがあります。

4. 社会全体の変化

現代社会では、インターネットやSNSが発展し、子どもたちは24時間絶え間なく情報にさらされるようになりました。これにより、心の休息を取る時間が少なくなり、ストレスが蓄積しやすくなっています。また、コロナ禍による社会の変化が、子どもたちの心に大きな影響を与えたことも一因です。

5. メンタルヘルスの問題

不安障がいやうつ病といった精神的な健康問題が、子どもたちの間でも増えています。これらの問題は、学校生活を送ることが困難になる大きな要因となっています。

メンタルヘルスの問題に早期に気づき、適切な支援を受けられるかどうかが、不登校の予防や改善に重要な役割を果たします。

6. 教育制度の問題

日本の教育システムは、画一的なカリキュラムや評価方法に依存しています。これが、一部のお子さんにとっては、適応しにくい環境となっていることがあります。個別のニーズに応じた教育が提供されないことで、学校に行く意味を見いだせなくなるお子さんが増えています。

これらの要因が複雑に絡み合い、不登校が増え続ける状況を生み出しています。それぞれの家庭や子どもに固有の事情があるため、解決策も多様であるべきですが、共通して言えるのは、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることが不可欠であるという点です。

学校や行政の不登校対策は?

不登校の増加が社会問題にもなっているため、学校や行政もさまざまな対策を講じています。

ここでは、どんな対策がされているのかについてご紹介します。

学校の対策

スクールカウンセラーの配置

多くの学校で、スクールカウンセラーを配置し、お子さんを心理的にサポートできるようにしています。

精神的に不安定になっているお子さんにスクールカウンセラーへの相談を促すことで、お子さんが抱えるストレスや不安を軽減しているほか、不登校のお子さんの学校復帰への道筋も支援しています。

別室登校など、個別対応プログラムの充実

教室に入ったり、登校することに抵抗感のあるお子さんには、通常の授業とは別に、別室登校ができる環境を用意したり、個別の学習プログラムを提供する学校もあります。

別室登校や個別対応プログラムは、不登校のお子さんの学校復帰のきっかけになり、お子さんの学力レベルや興味に応じた教育が可能になります。

フリースクールの利用促進

学校によっては、フリースクールや教育支援センターなど、学校の代わりとなる教育施設と連携し、お子さんが学校以外でも学習できる環境を整えています。

これにより、大人数での集団生活を基本とする学校の環境が合わないお子さんに適した学習環境で学ぶことが可能になっています。

オンライン学習の導入

コロナ禍を契機に、多くの学校がオンライン学習を導入しました。オンラインでの学習環境が整備されたことにより、不登校のお子さんが自宅でも学習を続けられるようになっています。

アンケート調査や相談窓口の設置

いじめなどの人間関係のトラブルを早期に発見するため、定期的なアンケート調査や、匿名で相談できる窓口を設置している学校も増えています。

ピアサポート活動

児童・生徒同士が支え合う「ピアサポート」プログラムを導入する学校も増えています。ピアサポートとは、「仲間・同輩」(peer)による支え合い活動(support)のことで、ニューヨークで非行少年への支援活動において、仲間支援の方法論として考案されました。

対人援助のトレーニングを受けた児童・生徒が、ピアカウンセラーやピアサポーターとして、いじめなどの相談にのることにより、いじめ問題などを早期に把握・解決に導くだけでなく、いじめの予防効果もあるといわれます。

行政の対策

教育機会確保法の施行

2016年に施行された「教育機会確保法」により、不登校のお子さんに対する教育機会の提供が法的に保障されました。この施行により、自治体は多様な教育機会を提供する責任を負うようになりました。

不登校対策ガイドラインの策定

文部科学省や各自治体は、不登校に関するガイドラインを策定し、学校現場での適切な対応を指導しています。このガイドラインに基づき、学校や教育委員会が連携して支援を進めています。

相談窓口や支援センターの設置

各自治体では、不登校のお子さんや保護者が相談できる教育相談センターを設置しています。

専門のカウンセラーや教育支援スタッフが、個別に対応し、お子さんの学校復帰を支援したり、代替教育の選択肢についての情報を提供したりしています。

また、不登校のお子さんを支援するための特化型機関が設置されており、各自治体で対応が行われています。例えば、教育支援センターでは、不登校の児童・生徒向けのプログラムやカウンセリングを受けることができます。

フリースクールや通信制高校の支援

不登校のお子さんが通うフリースクールに対して、行政が補助金を交付し、運営を支援する取り組みも進んでいます。これにより、経済的負担が軽減され、より多くの家庭が利用できるようになっています。

また、通信制高校のカリキュラムや支援プログラムも充実し、通学が困難な生徒でも高等教育を受けやすくなっています。行政は、こうした学校に対する支援を強化し、多様な学びの機会を提供しています。

社会的認識の向上

行政は、不登校に対する偏見や誤解を解消するため、社会全体での啓発活動を行っています。これにより、不登校が「特別な問題」ではなく、誰にでも起こり得る状況であることを理解してもらうことを目指しています。

また、保護者が不登校に適切に対応できるよう、自治体主催のセミナーや研修も行われています。

これらの対策は、不登校の原因が多岐にわたるため、個別の状況に応じて柔軟に対応することを目的としています。学校と行政が連携し、地域社会全体で不登校の問題に取り組むことが、今後ますます重要になってくるでしょう。

不登校が増加すると周りのお子さんにも影響がある?

不登校の児童生徒は、小学校で約60人に1人、中学校で約17人に1人という計算になります。

お子さんの通う学校やクラスに不登校のお子さんがいることは、珍しいことではなく、当たり前の状況といえるでしょう。

クラスメイトが不登校になることで、その他のお子さんへの影響も考えられます。

クラスの雰囲気が変化

クラスに不登校が発生すると、クラス全体の雰囲気が変わることがあります。先生や他のお子さんがその状況に対してどう対応するかによって、クラスの雰囲気が一時的に落ち着かなくなる可能性もあります。

心配やストレス

お子さんが不登校のクラスメイトを心配し、自分も同じように学校に行くのが辛くなるのではないかと不安になることがあります。特に、感受性が強いお子さんの場合、クラスメイトの不登校を深く受け止めてしまうかもしれません。

学校へ行かないという選択肢を知る

学校は、さまざまな性格・価値観を持つ児童・生徒が集団生活をする場であるため、何らかのストレスがあって当たり前の環境です。

ただ、多くのお子さんはストレスを感じても「学校は行かなくてはいけない場所」と考えて毎日登校しています。

それが、クラスメイトが不登校になることで、「学校は休んでもいい」という選択肢を知ることになります。

その選択肢を知ったことで、不登校になるお子さんも出てくる可能性があります。

増え続ける不登校。同じ境遇の保護者と繋がるには?

不登校の悩みは、同じ状況を経験していないと理解しにくい部分があります。

不登校のお子さんを持つ保護者同士がつながることで、お互いの悩みや不安を共有し、共感し合うことができるでしょう。

誰かが同じような困難を経験し、解決策を模索していると知るだけでも、保護者の孤独感が和らぎ、安心感が得られるはずです。

不登校に関する悩みや情報をオンラインで共有できる場として、ポータルサイト「ツナグバ」があります。

不登校の原因や悩み、親子のコミュニケーション、進路、出席扱い制度、フリースクールなど、不登校に関するあらゆる情報、子育てなどの困りごとを解決するために必要な情報を提供しています。

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【出典一覧】

*出典1 文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要」

参考箇所:3 長期欠席

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