【取材記事】不登校への多様な支援を広げていく。|不登校支援センター

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監修:ツナグバ運営局

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ツナグバは、教育コーチング資格保有者や不登校経験者などが集まって運営しています。臨床心理士やスクールカウンセラーの監修のもと、不登校に関するお悩みに関する情報や、フリースクール・通信制高校に関する情報を中心に、信頼性の高い情報を取り扱っています。ツナグバの「Q&A機能」では、同じ悩みを抱える方や、専門家と投稿のやり取りができます。私たちの提供するサービスが、様々なお子さんやその保護者を繋ぐ場となり、大きな力になることを期待しています。

目次

ツナグバはこの度、不登校支援センター様(以下敬称略)を取材させて頂きました。

不登校支援センターは不登校を根本から解決するための専門機関として、お子さんが学校や社会で適応する力を身につけていくために「積極的に働きかける」手法で支援されています。

不登校支援センター profile

団体名一般社団法人 不登校支援センター
HPhttps://www.futoukou119.or.jp/
お問い合わせhttps://www.futoukou119.or.jp/contact/

不登校支援センターは「あなたと私が共に成長することで、繋がる人の幸せを作ろう」という理念の下、2009年に名古屋で発足以降、東京、大阪へと拡大し、全国に7支部を展開されています。

今回の取材では、東京支部のカウンセラー・本沢裕太先生(以下:本沢さん)にお話を伺いました。

本沢 裕太 先生 / 公認心理師

経歴
中学校教諭免許を持つ。人間行動科学、精神分析、発達心理学を学び、東京支部所属のカウンセラーとして、高いコミュニケーション能力を生かしたカウンセリング・コーチングにより子供たちの社会復帰を支援している。

不登校支援は学校復帰だけがゴールではない

不登校支援センターの考える「カウンセリング」

―まず率直な疑問を持つ方が多いと思うのですが、カウンセリングとはどのようなことをされるんですか?

カウンセリングと聞かれた方は、もしかするとカウンセラー側から「こうしなさい」というアドバイスをするようなかかわりを想像されるかもしれません。当センターではクライアント本人が問題を解決していけるような心理的な支援を、専門スキルを用いながら共感的に行うことになります。

カウンセリングには様々な定義があると思いますが、当センターでは先ほど申し上げたように「共感的な姿勢でクライアントと対話する」ことからスタートします。対話を重ねる中で、クライアントが問題と向き合うための気持ちの準備や整理ができるような関わりをします。

―「クライアント」は不登校の状態にあるお子さんのことでしょうか?

保護者の方もお子さんもそれぞれクライアントになります。もっと言えば「ご家族」をクライアントの1単位として考えています。ですので目の前にいるクライアントだけでなく、時にはご兄弟との関わりや、おじいちゃんおばあちゃんと同居している場合はそういった人との関わりというのも一つのクライアントが抱えるものとして捉え、全体にどのような関わりの問題があるかを考えています。

とはいえ、カウンセリングに保護者の方だけで来られることもあります。例えば、お母さんが感じてる不安や悩みに対して「どうしたらいいですか?」とアドバイスをお求め頂くことも多いですね。

しかし、私たちからの「こうすればいいと思います。」という提案型の関わりでは、実は問題解決に繋がりづらいんです。それよりも、クライアントがなぜそれを問題と感じているのか?本当はどうしたいのか?というクライアント自身の気持ちを理解できるように、少しずつ深堀することを大切にしています。

―クライアントが悩んでいる原因を共に突き詰めていくイメージですか?

ニュアンスの違いかもしれませんが、原因の特定ではなく、クライアントが自分自身の気持ちの理解を深めるための関わりですね。

例えば、お子さんと「なんで学校に行きたくないんだっけ」「なんで学校が嫌なんだろう」という話をすると、友達や担任の先生との関係、勉強など、学校が嫌だなと思う理由はいくつか挙がると思います。しかし、本当にそれが理由で学校に行きたくないのかというと、お子さん自身もあまり腑に落ちてないことが多くあります。じゃあ本当の理由や原因って何だろうと言われても、お子さんも分からないことが多いんです。

ですので、心理検査などの手法を使いながら、まずクライアントが自分自身への理解を深め、自分自身の心は何にストレスを感じるか、どういったことはできるのか、というクライアント自身の気持ちの理解を大切にしています。

カウンセリングは伴走型の継続的支援

―具体的にクライアントは、どんなサポートを受け、実際にどのような変化があるのでしょうか?

例えば、中学生の時に初めてカウンセリングへ来られて、現在社会人3年目を迎えたクライアントがいます。定期的に対話だけでなく、進路や就職についても一緒に考えました。最初の入口は不登校の悩みですが、進路相談や人生設計まで伴走します。

そのクライアントは学校という組織になかなか馴染むことができず、保護者の方は大変心配されていましたが、まず本人の想いを丁寧に聴いていくと「最低限の学力は必要だと考えている」ことが本人の口から出てきましたので、高卒認定の資格を取得することになりました。

それからも、大学や専門学校の進学について一緒に考えた結果「社会に出て働いてみたい!」という自発的な想いからバイトを始め、傍らで本人は自分の得意なPC関係のスキルを磨いて就職活動をし、今では企業に勤めています。

―何だか一般的なカウンセリングのイメージより、かなり長期的な支援をされているように感じます。

そうですね。バイト探しも履歴書の作成もサポートしました。何でもやります!ではないですが、一歩踏み出す勇気をもって来てくれたクライアントが、その時に抱えている課題に対して、本人がどうしたいのかを引き出し、そのためにはどう行動していけばいいのかを一緒に考えるようにしています。前に向かっていくために私との関りが必要だと言ってもらったら、喜んで支援します。

そして、私たちは学校復帰だけがゴールではないと考えています。学校復帰を選ぶクライアントも、そうでないクライアントも、それぞれが自分らしくイキイキと前に向かって進めるような支援を心がけています。

不登校支援センターへ通うお子さんたちの作品。好きなことや得意なことを存分に発揮できる居場所だと感じられる。

環境の変化と不登校への課題認識

コロナによる支援の在り方の変化

―不登校支援センターではオンラインのカウンセリングもされているとお聞きしましたが、コロナによって何か変化を感じていますか?

確かにコロナウイルスによる生活様式の変化の影響は感じています。特にコロナ禍が明けていく過程の、学校の登校が再開しはじめたくらいのタイミングでは、なかなか足が学校に向かないというお子さんが多くいましたね。

実は当センターではコロナ禍以前からオンラインのカウンセリングを行っていましたが、やはりコロナ禍以降から実施することがかなり増えました。実際やってみると、カウンセリングの仕方に大きな変化や影響があるということはなく、また対面より品質が劣るというわけではありませんでした。対面にもオンラインにもそれぞれの良さがあると思っています。

―どのようなところにオンラインの良さを感じられていますか?

例えばオンラインだと自宅から対話を繋ぐことになります。対面ではいつもと違う場に身を置いて話をする良さもあるのですが、オンラインで自分の部屋から繋ぐ場合、クライアントの周りには自分の好きなものがあったり、いつも安心して過ごしている空間にいたりすることで、リラックスしてお話ししてもらえることもあります

画面越しにクライアントの家の中にあるものを見て「これは何?」「こういうことが好きなの?」とお子さんの興味のある話について深堀しながら、信頼関係づくりすることもできます。

オンラインでも十分な支援をしてさしあげることができるということが分かったのは、時代の変化による気づきでしたね。

支援の在り方の多様化

―最近コロナが落ち着きはじめてからは、また支援の仕方に変化はありますか?

コロナが落ち着き始めてから、伺える範囲であればご訪問をさせて頂くことも増えました。これまでは保護者の方だけで来られ「子供がどうしても行きたがらなくて…」とお声を頂くことも多かったんです。

しかし、訪問してみると、お子さんは意外と楽し気といいますか、元気にお話してくれます。先程申し上げたような、自分の家が安心できるスペースだからというのも要因としてあるように感じます。

保護者の方にとっては、会ってみるまでお子さんがきちんと話ができるか、嫌がらないか等、心配や不安もあると思います。しかし、会ってみるとお子さんはしっかりお話してくれるものです。ですので、お子さんが外出したがらない場合などは、このような支援サービスをご利用頂くことも、良い選択肢だと感じています。

「不登校」は問題ではないと言える社会へ

―環境の変化の影響もありながら不登校児童は増え続けています。本沢さんはこの課題についてどのように捉えていらっしゃいますか?

「不登校って、そもそも問題だろうか?」という問いを私たちは持っています。動物として危険を感じる場所からは離れることや、ケガをしたら休むことは、いたって自然なことです。同じように学校へ行かないという選択は身を守るために大切だと思います。

ただ、学校教育や社会構造から考えた際に、不登校という選択をした後に起きる辛さがあるのが現状の課題としてあります。ですので、人間関係や勉強のこと、そういった悩みとどう付き合い生きていくかの支援が必要になります。不登校支援自体は広がってきていますが、ご家庭にその情報が十分に行届いていないと課題を感じています。私たち専門家が知っている情報と、突然お子さんが不登校になったご家庭と、情報の差が大きすぎるんです。

今はオンラインでもオフラインでもたくさんのサポート、居場所があります。「学校に行けなくなっても大丈夫なんだよ」ということをもっと知ってもらえるように、私たちも活動を広げていきたいと思います。そういった情報が普及していった先で、自分に合った環境を選ぶことに対してポジティブに捉えられるような社会を作っていくことを目指しています。

悩みを抱える保護者の方へ

―不登校で悩むご家庭に、伝えたいことはありますか?

お子さんが不登校になった時に、様々な不安を感じられていると思います。お子さんとの関わりや学校との連携、学習や進路のこと、家の中での過ごし方…。

そういった保護者の方の悩みを話せる機会が少ないのではないでしょうか。「親だから」や「こうあるべき」と抱え込んでいる方もまだまだ多くいらっしゃると感じます。

私たちはそういった悩みや不安を安心して話せる場所をまず作っております。皆様が頑張ってこられたことを労うことが大切ですし、それも私たちは大切な支援だと考えています。1人で抱え込まず、ぜひご自宅からでも、ご訪問の形でも、ご相談頂けたらと思っています。


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