無気力型の不登校とは?特徴や対応のポイントを解説

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監修:中村洸太

監修:中村洸太

博士(ヒューマン・ケア科学)、臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士、池袋心理教育研究所代表、駿河台大学・聖学院大学・目白大学・ルーテル学院大学兼任講師 大学院修了後、心療内科・精神科クリニックや大学病院での勤務を経て、現在は、働くひとやその組織のメンタルヘルス支援などに関わる一方で、スクールカウンセラーとしても活動。小学校から高校生まで幅広く関わる。その他に、性的マイノリティのメンタルヘルス支援や弁護士向けのメンタルヘルス支援、オンラインを用いた臨床活動の研究や実践などを行う。

目次

不登校は原因やお子さんの状態によっていくつかの種類に分けることができます。「無気力型」もその中の1つです。不登校はそれぞれのタイプによって適切な対応方法が異なるため、それぞれの特徴と対応のポイントを把握しておくことが必要です。この記事では、無気力型の不登校の特徴や対応のポイントについて解説します。

※不登校のタイプの分類の仕方は変遷していますが、当サイトでは、文部科学省の「不登校状態が継続している理由」をもとに、不登校を7つのタイプに分類しております。
不登校の7つのタイプについて詳しく知りたい方はコチラ

(*出典1)文部科学省|不登校状態が継続している理由

無気力型の不登校とは

家で俯く女の子

無気力型の不登校は、何らかの理由で自分を肯定できなかったり(自己肯定感の低下)、日々の生活に物足りなさを感じたりして、通学に対して意欲が湧かない状態になるタイプの不登校です。

文部科学省の「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査について」によると、不登校の主な理由として「無気力・不安」と回答する小中高生の割合が最も高いことがわかります。不登校状態にあるお子さんの中には、無気力さを抱えているお子さんが多いということです。

(*出典2)文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

無気力型の特徴

無気力型の不登校には以下のような特徴が挙げられます。

  • 文字通り何に対しても「無気力」な状態にある。
  • 登校しないことへの罪悪感は少なく、強く催促すれば登校することもあるが、長続きしない。
  • 楽しい行事があるときや、友達に誘われたときなどは登校する。
  • 毎日の生活の中で主体的に何かすることが少なく、課題に対して自ら積極的に取り組もうとする意欲に乏しい。
  • 精神的には落ち着いてることが多い。
  • 心因性の身体症状はないことが多い。
  • 家では比較的元気で、インターネットやゲームなど、自分の好きなことをして過ごす。

このような特徴から保護者は、一見お子さんが「怠けている」「甘えている」と捉えがちです。しかし、お子さんはお子さんなりの無気力さを抱えているので、無気力感の背景をわかろうとする姿勢が大切です。

無気力型は原因が特定できないことが多い

無気力型の不登校ははっきりした原因が特定できないことも多いです。お子さんに理由を聞いても「学校や人間関係への不安はないが、何となく行きたくない」というケースがよく見られます。

そのため、保護者は解決方法を講じることができず、対応に困ることが多いです。不登校の原因がわからないからといって、周囲が勝手に原因を決めつけたり、思い込んだりすることは、本人のつらさが増したり状態を悪化させたりすることにつながりかねないため注意が必要です。

しかし、中には原因が明確な場合もあります。たとえば「過去の失敗や挫折から努力が無駄に感じる」や「家庭内の不和から明るい未来を想像できない」などが原因として散見されます。

無気力感の裏には自己肯定感の低下や、努力しても無意味だという考えが隠れている場合があるため、周囲がその背景をよく理解してあげることが重要です。不登校の背景は異なるため、周りの大人が自分の常識や経験に基づいて意見を押し付けないようにしましょう。

無気力型のお子さんへの対応方法

先生と面談する女の子とお母さん

無気力型のお子さんは解決方法が見出しにくいため、そのままの状況が持続され、不登校が長引くことがあります。したがって、社会から隔離されたような状態にならないような関わりが重要です。ここでは、無気力型のお子さんへの対応方法を紹介します。

カウンセリングを利用する

無気力型のお子さんは不登校の原因がはっきりしないことが多いため、対応が行き詰まってしまい、家庭内だけで問題を解決することが難しくなることも少なくありません。そのため、不登校の専門家に相談することが選択肢の1つとして挙げられます。

「無気力な状態ではあるが、このままの状態でいいとも思っていない。しかし、明確に変化を起こすことも難しい」という状況の中では、このままどうなっていくか、先が見えなかったり、お子さんや保護者が自分自身を責めてしまったりする場合もあります。そのような場合は、カウンセリングの利用が役に立つ可能性があります。

心の中で葛藤がある中で、お子さん自体がどのように葛藤を抱えていくか、お子さんにどのように関わるかなどを専門的な知識があるカウンセラーとともに一緒に考え、伴走していくようなイメージです。

また、不登校のお子さんをサポートすることで、気づかない間に保護者も疲弊していることもあります。保護者の余裕のなさから子どもへの不満が爆発して、きつい言葉をお子さんに投げつけてしまい、お子さんを傷つけてしまったり、きつい言い方をしてしまった自分に保護者自身も罪悪感を抱いてしまうなど悪循環に陥ってしまうこともみられます。お子さんだけでなく、保護者のカウンセリングの利用も合わせてご検討ください。

学校の先生との関係を良くする

お子さんにとって学校の先生は大きな存在です。学校の先生との関係を良好にするとお子さんの登校への意欲が上がることがあります。「学校には行きたくないが、先生と話しに学校に行く」というような関係をまずは構築できると良いでしょう。

もし担任の先生とお子さんの相性が良くない場合は、担任の変更は難しくても、別室登校や保健室登校など、他の先生とコミュニケーションを取りやすい環境を作ることも大切です。もちろん、お子さんが嫌がったり拒否反応があったりするときには無理せず見守ることも大切です。しかし、学校に少しでも味方がいるという安心感は、学校に行ってみてもいいかなと思える足掛かりになることも少なくありません。

もし、学校にいくことがゴールにはならなかったとしても、「学校が嫌な場所ではなかった」や「あの先生は自分のことを尊重してくれた」という経験自体が後々に良い影響を及ぼすこともあるでしょう。

学校以外の学びの場の利用を検討する

学校(在籍校)へ復帰することだけでなく、学校以外の学びの場を利用することも1つの選択肢です。

市区町村の教育委員会が、長期欠席をしている不登校状態の小・中学生を対象に、籍のある学校とは別に、市区町村の公的な施設で学習の援助をしながら本籍校に復帰できることを目標に運営している教育支援センター(適応指導教室など名称はさまざま)などもあります。また、通信制の学校への転入やフリースクールへ通うという選択肢もあります。

教育支援センターは、少人数での関わりを持つことや、学習する場などとして利用することができます。利用の仕方や機能は地域によっても特色が異なる場合もあります。まずは、家以外で過ごす場の確保や、遊ぶ場としてなら使ってみようなど、意欲の程度に応じての調整もしやすいのではないかと思います。

通信制の学校は毎日登校する必要がなく、学校によってさまざまな通い方ができます。通常の国語や英語などのような授業だけではなく、プログラミングやeスポーツ、絵画などの専門的な授業を行っている場合もあるため、お子さんの興味に応じて学校を選べる点もメリットです。お子さんの興味を広げていくことが将来への意欲を引き出すきっかけになるかもしれません。

また、現在はフリースクールも増えてきています。文部科学省が発表している「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」でも、お子さんの可能性を伸ばせるよう、お子さんの希望を尊重したうえで、フリースクールに通うことが推奨されています。

不登校を理由に学校で勉強する機会を失ってしまった児童生徒に対して、学校への登校を強制せず、それぞれにあった学習環境を保障するため「教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)」も定めらています。在籍している学校以外でも、いかに学ぶ機会を設けられるかということも重要視されているといえます。

(*出典3)文部科学省|「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

加えて、文部科学省は「出席扱い制度」という制度を認めています。学校(在籍校)が家庭に対して認めるか認めないかで出席扱いかどうかは判断されますが、仮に家庭学習であっても学校が認めれば出席扱いになるという制度です。必ず学校への復帰をしなければならないわけではなく、出席扱い制度を利用してフリースクールやオンラインを通じた家庭での学習を行うこともお子さんの可能性を広げる選択肢の1つです。

出席扱いに関しては、以下の記事で詳しく説明しているため参考にしてください。

▶︎フリースクール・ICTでの学習は出席扱いされる?要件やフリースクール選びのポイントを解説!

無気力型のお子さんへの対応のポイント

女の子に本を読み聞かせるお母さん

無気力型のお子さんに対しては、自分が大切にされているという感覚や自信を持てるような関わりが必要になります。ここからは無気力型のお子さんへの対応で特に注意が必要なポイントを解説します。

原因を掘り下げすぎない

無気力感の原因をお子さんがわかっていても、保護者に伝えることが難しい場合があります。無理に原因を問いただすことは、お子さんの心の壁を作ることにもつながるため注意しましょう。

また、過去の失敗からくる無力感や諦めが原因の場合がありますが、保護者の過干渉などから主体性が欠如しているように見えることもあります。原因の背景を保護者が把握している場合は、環境を変えてみるのも良いかもしれません。いずれにしても、お子さんの気持ちに寄り添いながら追い詰めることなく、見守る気持ちでサポートすることが大切です。

お子さんの気持ちを理解する

お子さんの不登校を「甘えや怠惰」と捉えることは避けましょう。お子さんの想いを尊重したうえで良好な関係を保ち、こまめにコミュニケーションを取ることが大切です。その中でお子さんが意欲的になれることや興味があることが何なのかを理解し、それを援助していきましょう。お子さんが好きなこと、楽しめることを理解し、心のエネルギーを溜めていくことも大切です。

また、場合によってはお子さん自身も原因がよくわかっていないような場合もあるため、無理に原因を追求せずに、今を安全に過ごせる方法などを一緒に考える方に焦点を当ててみることも大事にしてみてください。

学校に行くことだけをゴールにせず、お子さんが興味のある分野での小さな成功体験を重ねていけるようにすると良いでしょう。自分でできたという自信により自己肯定感が高まると、少しづつ気持ちも前向きに変わってくることもあるでしょう。

まとめ

無気力型の不登校は何に対しても無気力な状態にある不登校のタイプで、原因が特定できないことが多いです。しかしその裏には、自己肯定感の低下や生活への物足りなさなどが主な原因として考えられます。「過去の失敗や挫折から努力が無駄に感じる」「家庭内の不和から明るい未来を想像できない」などの原因も散見されます。

無気力型のお子さんへの対応方法としては、カウンセリングを利用したり、学校の先生との関係を良くしたり、学校以外の場の活用として教育支援センター(適応指導教室)や通信制の学校への転入、フリースクールの利用などを検討したりすることが挙げられます。

保護者は焦ることなく、お子さんとのコミュニケーションを大切にしながら、時間をかけて解決策を見つけていきましょう。お子さんの気持ちに寄り添い、お子さんが意欲的になれることが何かを理解してあげることが大切です。

【出典一覧】

*1 文部科学省|不登校状態が継続している理由
参考箇所:冒頭

*2 文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
参考箇所:無気力型の不登校とは

*3 文部科学省|「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
参考箇所:学校以外の学びの場の利用を検討する

【監修者コメント】

本記事では、無気力型の不登校に関する内容をご紹介いたしました。無気力な状態の場合には、無理をさせてはいけないけど、どこまではさせても大丈夫なのだろうかと「匙加減」を測ることが難しく感じられることもあるかもしれません。

関わる側も、自分の余裕があれば優しくできる日もあれば、自分の余裕次第ではキツく当たってしまうようなこともあるかもしれません。また、原因がはっきりしないけど、気力が湧かないなど、お子さん自身もどうしたらいいのかわからないような中で生活していることも少なくないような印象です。

「匙加減」や「いい塩梅」というのは、まさに言うは易く行うは難しきものです。杓子定規に図らずに、対話をしながら調整していく共同作業かもしれません。

大人であっても、休むのが苦手な人は少なくありません。子どものうちから自分にあった休み方を考えることも、先々を考えると大事なことかもしれませんね。

参考書籍:
学校では教えてくれない 自分を休ませる方法
10代から身につけたい ギリギリな自分を助ける方法

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